研究課題/領域番号 |
18K17239
|
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
内堀 雅博 東海大学, 医学部, 助教 (50749273)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | Liquid Biopsy / cfDNA / ctDNA / OSCC / NOTCH1 / NOTCH1変異 |
研究実績の概要 |
本研究は、口腔扁平上皮癌(OSCC)におけるNOTCH1リガンド結合領域の変異の発現細胞を用いて機能を解析し、NOTCH1の腫瘍原性を解明すること、また、OSCCにおける新しい診断方法としてのLiquid biopsyを確立させるための足掛かりとなるデータを得ることである。平成29年度は、下記の2つの計画を行った。 ① NOTCH1の機能解析: すでに報告しているNOTCH1変異型安定発現細胞以外の、臨床標本由来の2種の変異型(p.G481S、p.C387Y)安定発現細胞を用いて、細胞増殖能の計測、フローサイトメトリー(FC)とウエスタンブロッティング(WB)でタンパク質の解析を行った。野生型は細胞増殖能が有意に上昇したが、変異型は低下していた。FCにおいて、野生型はほぼ全てがNOTCH1の細胞膜表面への発現を示したが、変異型では著しく減少していた。WBで変異型のNOTCH1細胞内ドメインの発現レベルは、野生型と比較して低かった。これらはわれわれが以前に報告した結果(Oncol Rep 2017)と同じ傾向であった。 ② OSCC患者由来のcfDNA(ctDNAを含む)の手術前後における濃度の変化の解析: 20症例の患者に対し、手術前後(手術中の切除前、手術後24時間後)に血液を採取した(採血管はStreck社のCell-Free DNA BCTを使用)。その血液の血漿よりcfDNAを回収し、濃度を測定した。手術後の濃度の上昇、減少両者とも認められ、明らかな違いは見られなかった。また、1症例ではあるが、病理学的切除断端陽性患者は、手術後のcfDNA濃度は上昇していた。さらに、再発、転移とcfDNA濃度との間に明らかな関連性は見られなかった。 cfDNAは手術侵襲による影響でも上昇することが一般的に知られているため、cfDNAが腫瘍由来かそうでないのかを今後解析する必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NOTCH1の機能解析に関しては以前報告したものと解析方法が類似していること、すでに保有している安定発現細胞を用いていることから、順調に進んでいる。しかし、当初平成30年度に予定していた計画である、NOTCH1変異による放射線、抗腫瘍薬への影響の解析に関しては行えなかったため、この点では遅れていると考える。 cfDNAの解析においては、継続的に検体を得ることができている。また、血液のみでなく、同一患者の癌組織も採取し、凍結保存することができているため、より正確な遺伝子解析が可能である。cfDNAの遺伝子解析の準備も進んでいるため、現時点では順調であると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要①に関しては、一般的に臨床で用いられる放射線や抗腫瘍薬をNOTCH1変異型安定発現細胞、NOTCH1野生型安定細胞に暴露させ、NOTCH1変異が臨床的にどのような意義があるかをさらに解析する。また、それらの細胞株を免疫不全マウスへ異種移植し、生着率の変化、放射線、抗腫瘍薬の感受性についても解析を行う予定である。また、NOTCH1変異がNOTCH経路の下流の因子にどのように関わってくるのかを、臨床標本を用いて解析する予定である。 研究実績の概要②に関しては、得られたcfDNAが腫瘍由来のものであるのか解析するため、癌組織から得た臨床標本由来のDNAと、同一患者の血漿から得られたcfDNAの遺伝子解析を次世代シークエンサーを用いて行う予定である。得られたデータと臨床情報を照合させ、臨床におけるcfDNAの有用性に関して評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
NOTCH1解析の中で平成30年度に計画していた、免疫不全マウスへの移植、放射線、抗腫瘍薬の感受性の解析が行えず、次年度に予定を組みなおしたため。 平成31年度はこれらの解析も行う予定である。さらに、cfDNA採取のための採血管も継続して必要となるため、繰越金を使用する予定である。
|