口腔扁平上皮癌(OSCC)におけるNOTCH1リガンド結合領域の変異発現細胞を用いて機能を解析し、NOTCH1の腫瘍原性を解明すること、また、OSCCにおける新しい診断方法としてのLiquid biopsyを確立させるための足掛かりとなるデータを得ることが本研究の目的である。昨年度までに、主にLiquid biopsyの確立のための足掛かりとなるデータとして、手術前、手術後、その後3ヶ月ごとの採血を行い、その血漿よりcfDNAを抽出し、臨床データと濃度の解析を行っており、本年度で最長術後2年までの解析を終えた。その結果、cfDNA濃度は採血を行うタイミングによって変化するため、濃度の変化のみで再発や転移を明らかにすることは現時点では難しいと考える。しかし、死亡する2、3ヶ月前より急激にcfDNA濃度が上昇することから、死期の予測には有効である可能性があると考える。今後も継続して解析していく予定である。また、cfDNAの遺伝子変異を次世代シーケンサーとデジタルPCRのどちらを利用すれば効率よく検出することができるかどうかを解析した結果、次世代シーケンサーの方が有用であることを明らかにした。しかし、今までは76の遺伝子に限定したターゲットシーケンスであった。76の遺伝子以外にも重要な遺伝子変異がある可能性があるため、今後は遺伝子数を絞らないエキソームシーケンスを計画する。NOTCH1に関しては、今まではリガンド結合領域に限定した解析で腫瘍原性があることを明らかにしたが、リガンド結合領域以外は解析を行っていなかった。そのため、リガンド結合領域の解析を行ったものと別サンプルのOSCC標本でNOTCH1の全エクソン解析を行ったところ、9.2%に遺伝子変異を認め、やはりリガンド結合領域に集中していた。これにより、リガンド結合領域の解析の必要性があることを再認識した。
|