研究実績の概要 |
鎖骨頭蓋異形成症は骨牙細胞分化の必須転写因子であるRunx2の遺伝子変異による遺伝性疾患であり、顕著な歯の移動遅延が認められるため、矯正歯科治療が非常に困難であり、未だに適切な治療法が確立されていない。申請者のグループは、同症モデルであるRunx2ヘテロノックアウトマウスを用いて、歯の移動遅延の一因が破骨細胞のメカニカルストレス応答低下であることを明らかにしてきたが、その他の因子についてはわかっていない。近年、骨代謝に影響をおよぼす免疫系の関与が注目されている。同症患者の多くが反復性感染症に罹患し、易感染性であることから、免疫機能の異常が推測されることから、本研究は、新しい視点から鎖骨頭蓋異形性症の易感染性、歯の移動遅延の原因となる免疫細胞を同定、機能解析することにより、鎖骨頭蓋異形成症の顎顔面、口腔内の病態を明確にし、新たな矯正歯科治療方法の開発への基盤および感染症への治療法を提供することを目的とする。 Runx2は、骨牙細胞の必須転写因子として知られているが、免疫細胞においても形質細胞様樹状細胞 (pDC)、好塩基球、natural killer (NK)細胞において発現が確認されている。pDCについては、Runx2 により分化、サイトカイン産生を制御するとの報告があるが、好塩基球とNK細胞はともに、様々なサイトカイン産生し(IL-4,IL-6, IFN-γなど)、アレルギーやウイルス感染防御に対して重要な細胞であることが知られているが、Runx2の影響については明らかになっていない。また、Run2ヘテロノックアウトマウスにて免疫細胞の解析をした報告はない。そこで、まず、野生型およびRunx2ヘテロノックアウトマウスにおけるこれら細胞を含む免疫細胞(T細胞、B細胞、好中球、マクロファージ、好酸球など)を各組織(骨髄、歯周組織、血液)から単離し、Runx2 の発現を確認した。口腔内歯周組織においても、各細胞において Runx2 の発現が認められた。
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