研究課題
近年、歯の再生医療が社会から切望されている。代表者の所属するグループは、器官原基法を応用したマウスの再生歯の発生を報告したが、それらの再生歯は、天然の歯と比較して顕著にサイズ小さくまた咬頭パターンが異なる形態的問題を示した。代表者らはこれまでに、IGF1が再生歯のサイズ増大と咬頭数増加を誘導し、これらの問題の改善に寄与することを示したが、天然歯と比較した再生歯形態の不調和は、未だ十分には解決していない。一方、Hif1αは器官のサイズに影響し、また、IGF1シグナルと相互に作用することが知られているが、歯の発生における役割は不明である。本研究では、歯の発生におけるIGF1とHif1α の機能を明らかにするとともに、IGF1とHif1αの相互作用に着目して、IGF1を作用させた再生歯のサイズと咬頭形成亢進に対するHif1αの作用を解明する。本年度は、妊娠マウスにpimonidazoleを投与し、マウス胎仔の歯胚組織切片上でHypoxyprobeと、Hif1αの発現を解析した。さらに、野生型マウス胎仔から下顎臼歯歯胚を摘出し、IGF1を添加して器官培養を行った後に、位相差顕微鏡にて形態計測を行うとともに、エナメル芽細胞、象牙芽細胞、エナメルノットおよび細胞増殖マーカーの発現をリアルタイムPCRにより解析した。また、摘出した歯胚から歯胚上皮および間葉細胞を分離し、IGF1存在下で単層培養を行い、摘出歯胚と同様にリアルタイムPCRを用いて各マーカーの発現を解析した。
2: おおむね順調に進展している
歯の発生過程におけるHif1αの発現の解析および、IGF1の機能の解析を行うことができたため。
歯の発生過程におけるHif1αの機能を解析する。また、IGF1が歯胚由来上皮および間葉細胞におけるHif1α転写活性に及ぼす影響を調べる。加えた、Hif1αが歯胚由来上皮および間葉細胞におけるIGF1シグナル活性に及ぼす影響を解析することで、IGF1とHif1αの相互作用を解明する。さらに、Hif1αと同様に低酸素シグナルの一つであるHif2αについて、歯の発生過程における発現と機能の解析を行う。
本年度の歯胚上皮細胞の培養条件の確立に当初の予定より多くの時間を要し、次年度も継続的に培養実験を行う必要があるため。
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Scientific Reports
巻: 9 ページ: 368
https://doi.org/10.1038/s41598-018-36863-6