成長期に発現する片側性臼歯部交叉咬合は、下顎骨側方偏位、すなわち顔面非対称を誘発し、機能面において顎顔面領域の正常な成長発育を阻害することが報告 されている。近年われわれは、成長期ラットにおける顎関節機能障害モデルを作成し、顎関節潤滑機能に与える影響をルブリシンに着目して世界に先駆けて解明 した。しかし、成長期の片側性臼歯部交叉咬合に起因する下顎骨側方偏位の誘発および回復の機序は未だ解明されていない。そこで本研究課題の具体的な目的は 「成長期の片側性臼歯部交叉咬合の発現および改善がIndian hedgehog (Ihh)およびTransforming growth factor (TGF-β)を介して、顎関節潤滑機能に関与する ルブリシンの産生能変調を生じることを示すことにより、下顎骨側方偏位の誘発および回復の原因となる新たな経路を形態学的・組織生化学的に解明する」こと である。また、それに加え、機能的下顎側方偏位時の咀嚼筋への形態学変化を観察した。5週齢のWistar系雄性ラットを対照群(n=18)、偏位群(n=16)、回復群(n=9)として実験を進め、トルイジンブルー染色による顎関節の形態学的評価、抗ル ブリシン抗体、抗Ihh抗体PRG4、 Parathyroid hormone-related protein(PTHrP)、Matrix metallopeptidase 13(MMP-13)、A disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin motifs 5(ADAMTS-5)および抗TGF-β抗体を用いた免疫組織化学染色評価およびReal-time PCR法を用いて各抗体のmRNA 量の生化学的評価を行った。
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