研究課題
初年度に当たる2018年度は、有効な動物実験モデルの確立を目標とした。まず、申請時の計画に従い、雄性ビーグル成犬の両側脛骨に実験用スクリューを植立する実験を行った。確実にスクリュー周囲に骨吸収をきたす条件を模索するため、過大なマイクロダメージが生じるよう、下孔の大きさを小さくした。植立トルクは最適トルクの2-3倍(20-30N・cm)であった。植立後4週間でスクリューを周囲の皮質骨と一塊に摘出し検体とした。CTおよび非脱灰研磨標本の観察所見では、いずれの検体においても明らかな骨吸収像は認められなかったが、植立トルクが大きくなるに従い、resorption cavityが増える傾向が認められた。以上の結果から、確実に骨吸収をきたす実験群を作成することは困難であることが示唆された。一方で、植立トルクとresorption cavityの関連性を新たに発見することができた。これはresorption cavityの出現によって骨の物性が損なわれることから、脱落の原因を示唆する重要な所見である。マイクロダメージとresorption cavityの関連性の検討を行うため、実験動物をラットとし、検証実験を行った。まず、マイクロダメージの制御方法の検証を摘出大腿骨で行った。試料は直径 1.3 mmと2.0 mmのチタン合金製のセルフタップ、セルフドリルのスクリューとし、植立後直ちに塩基性フクシンで染色して非脱灰研磨標本を作製した。蛍光顕微鏡および共焦点レーザー顕微鏡でLiner damageおよびDefused damageの定量を行ったところ、直径が大きい2.0 mmのスクリューでより多くのマイクロダメージが観察され、スクリューの直径でマイクロダメージの制御が可能であることが示された。次年度以降、ラット脛骨に直径の異なるスクリューの植立を行い、骨代謝状態の比較を行う。
3: やや遅れている
スクリュー周囲に確実な骨吸収をきたす群の再現が困難であることが明らかになった一方で、皮質骨代謝状態に関する新たな所見が得られ、ラットを用いた実験系での検証が必要となった。以上より実験計画にやや遅れが生じている。
2018年度の研究成果を基に、マイクロダメージが骨代謝状況に影響を及ぼしている可能性について検討を行う。実験動物はラットを用い、脛骨に直径 1.3 mmまたは2.0 mmのチタン合金製のスクリューを植立し、植立から2週間後、4週間後にそれぞれ採材を行う。評価はresorption cavityの出現率の他、BMD値測定、力学試験等を予定している。
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