摂食機能において口唇閉鎖が重要な役割を担っていることは広く知られており、口唇閉鎖が可能にする口腔の隔離は、顎運動のコントロールや舌運動の発達と一体となり、食物処理や嚥下圧の形成に深く関与する。しかし、小児における口唇機能に関した発達過程は未だ解明すべき点が多く、正常な機能発達の評価と機能障害における病態理解の両側面から、摂食時の口唇機能について解明することは社会的に広く重要な意義がある。また、捕食動作は口唇のみならず、頭部、腕部、食具の協調運動であるがその協調性に関しても明らかになっていない。 この摂食機能の発達過程を明らかにするために小児および成人を対象に自食時の捕食を中心とした摂食運動における口唇機能に関し多角的に解析を行うことで、発達プロセスの特徴を明らかにし、併せて食品や食具の影響について検討することを目的とし研究を行った。 本研究から、食品が捕食機能に与える影響として、小児、成人とも食品の物性に関わらず、一口量が大きくなると、口腔内へのスプーン挿入量の増加がみられた。また、食品の物性の面ではチーズのような粘性の高い食品で小児、成人ともに捕食時口唇圧が大きくなることが明らかとなった。これらのことから口腔機能の獲得期である小児においても成人と同様に一口量や食品の物性により摂食機能を調整していることが示唆された。 一方で、小児では成人と比較し、捕食動作における口腔、頭部、腕部の協調運動のパターンが多岐にわたっており、小児期における口腔機能の発達において協調運動の評価は有用である可能性が示唆された。本研究から得られた知見は口腔健康を推進する基盤的な情報提供を行えたと考えられる。
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