研究課題
これまでに、う蝕の主要な病原細菌である Streptococcus mutansの一部の菌株が非アルコール性脂肪肝炎の増悪化に関連している可能性を明らかにした。また、それらの菌株の表層には、分子量約190 kDaのProtein antigen (PAタンパク)および分子量約120 kDaのコラーゲン結合タンパク(Cnmタンパク)が共通して発現しており、非アルコール性脂肪肝炎の増悪化に関与していることを見い出した。本研究では、非アルコール性脂肪肝炎モデルマウスにおける経時的な評価を行うため、S. mutans TW871 株(PA+/Cnm+)の菌投与後 8 週、12 週、16 週、44 週におけるマウス群と、高脂肪食の摂取のみを行った同じ週数のマウス群を比較検討して評価を行った。その結果、高脂肪食の摂取のみを行っていたマウス群の肝臓においては、44 週で脂肪の蓄積や局所における線維化が認められ、非アルコール性脂肪肝炎様所見を呈していた。一方で、TW871 株を投与したマウス群の肝臓では、投与後わずか12 週で脂肪の蓄積や初発線維化が生じ始め、16 週で線維化が明確に認められ、44 週では、肝臓組織広範囲に及ぶ繊維化が認められた。これらの結果から、脂肪の蓄積した肝臓において、ある種の S. mutans 菌株が血液中に侵入することによって、早期における脂肪の蓄積や線維化を誘発し、非アルコール性脂肪肝炎の症状の悪化を引き起こすことが明らかとなった。本研究から、小児期の肥満において口腔細菌が関与する病原メカニズムが存在する可能性があると考えられる。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Journal of Oral Microbiology
巻: 10 ページ: 1428005~1428005
10.1080/20002297.2018.1428005