研究課題/領域番号 |
18K17254
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大継 將寿 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (40803086)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 感染性心内膜炎 / ミュータンスレンサ球菌 / コラーゲン結合タンパク / う蝕 / ラット |
研究実績の概要 |
これまでに、う蝕病原性細菌のうち菌体表層にコラーゲン結合タンパク(Collagen-binding protein;CBP)を発現しているミュータンスレンサ球菌が感染性心内膜炎の病原性に関与していることを明らかにしてきた。しかし、従来の動物モデルでは菌を血中に人工的に投与し病原性を評価しており、う蝕病変部に存在する菌による感染性心内膜炎の病原性を評価するモデルは存在していなかった。本研究では、CBPを発現しているミュータンスレンサ球菌をラットの口腔内に定着させ重度のう蝕を誘発した状態で心臓弁に傷害を生じさせ、う蝕病変を介した感染性心内膜炎の病原性について検討した。まず、CBPを発現しているミュータンスレンサ球菌であるSA31株を18日齢のラットの口腔内に定着させ、56%スクロースを含有した飼料を与えて飼育し重度のう蝕を誘発させた。その後、90日齢時に全身麻酔下にてラットの右頸動脈よりカテーテルを挿入し、心臓弁に傷害を生じさせ、その1週間後、1か月後および3か月後に屠殺して、う蝕病変の評価および心臓弁における病原性の評価を行った。どの時期で屠殺したラットにおいても口腔内にう蝕を認めたが、飼育期間が長いラットほどう蝕の程度は重度であり、3か月飼育したラットでは残根状態であった。また、1か月および3か月飼育したラットから摘出した心臓弁においては、口腔内に定着させたSA31株が検出された。これまでに、重度のう蝕と感染性心内膜炎との関連性を示す報告はなく、検討する実験系も存在していなかった。そのため、本研究ではラットう蝕モデルとラット心臓弁傷害心内膜炎モデルを融合させた初めての動物実験系で確立できた。さらに、CBPを発現しているミュータンスレンサ球菌がう蝕病変を介して歯髄腔より血液循環に侵入し、感染性心内膜炎の病原性に影響を及ぼす可能性を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的の1つは、ラットう蝕モデルとラット心臓弁傷害心内膜炎モデルを融合した動物実験系を確立することである。さらに、CBPを発現しているミュータンスレンサ球菌をラットの口腔内に定着させ重度のう蝕を誘発した状態で心臓弁に傷害を生じさせ、う蝕病変を介した感染性心内膜炎の病原性を検討することである。現在までに、ラットう蝕モデルとラット心臓弁傷害モデルを融合させた初めての動物実験系を確立することができている。また、CBPを発現しているミュータンスレンサ球菌がう蝕病変を介して歯髄腔より血液循環に侵入し、感染性心内膜炎の病原性に影響を及ぼす可能性も示すことができている。これらのことから、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、それぞれの時期に屠殺するラットの総数を増やすとともに、ミュータンス菌を非感染のラットおよび心臓弁に傷害を与えないラットを新たに飼育し、う蝕病変の評価および心臓弁での病原性の評価を行い、包括的な検討を行いたいと考えている。また、う蝕スコアと心臓弁での病原性スコアとの相関を検討する予定である。 次に、菌感染ラットおよび菌非感染ラットから摘出した心臓を用いて、マイクロアレイによる遺伝子発現の変化に対する網羅的検索を行い、ミュータンスレンサ球菌の感染が心臓に与える現象について詳細に検討するつもりである。また、ヒトの循環器系培養細胞を用いてミュータンスレンサ球菌を感染させ、共焦点レーザー顕微鏡にて細胞への付着侵入能を検討することを考えている。さらに、マイクロアレイ分析にて発現上昇を認める分子を抽出し、菌の感染により生じる病態悪化に関連する生体側の要因を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 動物飼育施設の使用可能な時期が予定よりも若干少なかったため、数匹分の動物実験が遅れている。しかし、次年度の早い時点で予定したスケジュールに追いつくことができると考えている。 (使用計画) 次年度早期に今年度に予定していた動物実験を遂行するつもりである。
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