研究課題
本研究では、コールドレーザーの被照射組織に対する生体活性作用(バイオスティミレーション効果)と、その高い安全性に着目した。コールドレーザーは従来の低出力半導体レーザーと比較して高い光エネルギーを持ちながら、超短パルスレーザーであるため、照射時の組織の熱損傷を伴わないという特徴がある。そのため、照射時にはより安全にレーザー光を深部組織に到達させることが可能となる。これを応用して矯正歯科治療時における歯周組織代謝機構を解明するとともに、コールドレーザー照射時の歯の移動速度の変化について検討した。in vitroでは、マウス頭蓋冠由来骨芽細胞用細胞(MC3T3-E1)を用いた。培養細胞に対してコールドレーザーを照射した際の細胞増殖能への影響をELIZA BrdU assayおよびATP assayにて検討した。また、レーザーが細胞内伝達物質に及ぼす影響について検討するため、MAPK/MEKシグナル伝達経路の中間経路として知られるMAPK/ERK 1/2、p38 MAPK、SAPK/JNKのリン酸化について検討を行った。in vivoでは、ラットの実験的歯の移動モデルを作製し、レーザー照射を行った時の歯の移動距離の検討を行った。また、歯周組織の組織切片を作製し、骨代謝マーカーの発現を免疫組織化学染色にて検討した。その結果、レーザー照射により、MT3T3-E1の細胞増殖能が亢進した。そして、MAPK/ERK 1/2、p38 MAPK、SAPK/JNKのリン酸化が亢進した。また、ラットの実験的歯の移動時にレーザー照射を行うことにより、歯の移動が亢進された。さらに、歯の移動後の歯周組織の免疫組織化学染色により、圧迫側ではRANKLの発現の亢進が認められ、けん引側ではALP、BSP、PCNAの発現の亢進が認められた。
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J Oral Sci
巻: 61(1) ページ: 67‐72