本研究課題は、外胚葉異形成症原因遺伝子の一つであるPKP1の歯における機能解明を目的として研究を開始した。これまでの研究で、PKP1は細胞膜において細胞間接着因子のひとつであるZo-1と協調して働き、細胞間接着を維持すること、また、Wnt刺激により、核内に移行することで遺伝子調節を行うことが判明した。 今年度は主に、Wntシグナル刺激時に、PKP1が核内移行するときに機能している領域の同定を試みた。PKP1遺伝子のC末端およびN末端を順次欠損させたGFP conjugate発現ベクターを8種類作成し、遺伝子導入を行い、Wnt刺激下での核内移行を検討した。その結果、アミノ酸配列の169-202領域に核内移行に重要な領域が含まれていることが判明した。同領域にはimportin依存型核内移行シグナルに重要な配列が含まれていた。そこで、同配列にmutationを挿入した発現ベクターを作成し、検討したところ、PKP1の核内移行が阻害された。一方で、細胞質への移行は認められたことから、同領域は細胞質から核内への移行を制御している可能性が示唆された。 さらに、CRISPR/Cas9システムを用いてZo-1遺伝子欠損細胞を作成し、PKP1の局在を確認したところ、PKP1の細胞膜局在が阻害されていた。これらの結果から、PKP1は細胞接着が阻害されることで、細胞膜からの遊離し、細胞質内に移行すること、さらにimportin領域を介して、核内に移行していくという2段階の制御によって核内に運ばれることが判明した。本研究成果は、新たなWnt non-canonical pathwayの発見に繋がり、生物学の発展に寄与できると考えられる。
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