歯科を受診する自閉症におけるメラトニンの機能解明：自然免疫との接点について

2022 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 18K17264
• 研究機関: 昭和大学
• 研究代表者: 嘉手納 未季 昭和大学, 歯学部, 助教 (20529367)
• 研究期間 (年度): 2018-04-01 – 2023-03-31
• キーワード: メラトニン / 自然免疫 / 自閉スペクトラム症

研究実績の概要

自閉スペクトラム症は睡眠障害が深刻な問題である。サーカディアンリズムを司る脳松果体ホルモンであるメラトニン量が少ないとの報告があり、睡眠導入薬としてメラトニンを服用している患者がいる。自閉スペクトラム症患者の口腔内において、口腔清掃状態が良好であるにも関わらず、歯周病が難治化する症例がみられることから、メラトニン服用と歯周病悪化との関連性が懸念される。メラトニンは免疫系に対する抑制作用が報告されているため、メラトニンが免疫系に及ぼす影響について検証を行った。メラトニン処理したマクロファージでは炎症性サイトカインの遺伝子発現がシグナル特異的に抑制された。マイクロアレイのクラスター解析の結果、メラトニンは細菌だけでなくウイルス感染の抑制に関わることが示唆された。メラトニンによるTh17応答については、マウス脾臓細胞からCD3陽性リンパ球を単離し、メラトニンで前処置後、腹腔マクロファージとTGF-βの共培養下でTh17細胞を誘導し、IL-17産生誘導能をフローサイトメトリーにより解析したところ、LPS刺激されたマクロファージからのIL-6産生を抑制し、Th17細胞の分化誘導を抑制した。脳炎や神経疾患の原因物質となる脳心筋炎ウイルス（EMCV）を用いて、マクロファージに感染させ、メラトニンの影響を解析したところ、細胞内で著しくウイルスRNA量が減少していた。また、IFN-βの発現誘導について解析したところ、メラトニンにより抑制されていた。
2020年からメラトニンが小児期の神経発達症に伴う入眠困難な患者へ入眠改善剤として保険適用された。脳ホルモンであるメラトニンが感染抵抗性に対してどのような影響を与えるのか今後も検証が必要であると考える。

研究成果

• [雑誌論文] Melatonin suppresses the antiviral immune response to EMCV infection through intracellular ATP deprivation caused by mitochondrial fragmentation (2022)
  • 著者名/発表者名: Mariko Kikuchi, Miki Kadena, Haruka Fukamachi, Takashi Takaki, Shohei Matsui, Sumire Hoashi Takiguchi, Hirobumi Morisaki, Natasa Trtic, Mina Mori, Mie Kurosawa, Momoe Itsumi, Takahiro Funatsu, Atsuo Sakurai, Seikou Shintani, Hiroki Kato, Takashi Fujita, Yasubumi Maruoka, and Hirotaka Kuwata
  • 雑誌名: Heliyon 巻: 8 ページ: -
  • DOI: 10.1016/j.heliyon.2022.e11149
  • 査読あり / オープンアクセス