研究実績の概要 |
近年エッジワイズ装置による治療に絶対的固定源として歯科矯正用アンカースクリューが用いられるようになっている。アンカースクリューを植立する部位としていくつか用いられているが、その中でも口蓋正中縫合部が注目されている。上顎骨は形態学的特徴から神経・血管・歯根といった解剖学的構造を持っていないため、アンカースクリュー植立に最も適した部位であると考えられる。そこで、口蓋領域のなかでも正中縫合部周囲の厚さを調べることによって、植立にもっとも適した部位を選定する。また、アンカースクリューの安定性となる要素を検討し、最適なアンカースクリューの形態や厚さ、材質を調べることによって安定性、形状の指標となるよう骨形態の計測を行った。 女性45人を対象とし、術前にアンカースクリューの植立方向を確認するためステントを装着して1mm厚で撮影した歯科用CT画像を用いて行った。 口蓋隆起の形状については、Kolasらの方法に従い、上顎模型の口蓋正中部に存在する隆起のうち、周囲との境界が明瞭で、豊隆が視診にて明らかに判断できるものを口蓋隆起ありと判断した。患者は口蓋隆起が認められない患者(TP-absent) (n=21)、口蓋隆起が認められた患者(TP-present)(n=24)の2群に分類した。骨の厚さの測定は、正中口蓋縫合に沿って1mm間隔で計測を行った。矢状面画像より、口蓋骨の厚さを5㎜間隔で測定し、0-4mm(G1), 5-10mm(G2), 11-15mm(G3), 16-20mm(G4)の4群に分けて計測を行った。 その結果、TP-present群はTP-absent群よりも全区間において有意に厚く、TP-absent群の最も厚い領域はG2であった。TP-present群においてはG1,G4よりもG2,G3のほうが厚かった。
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