研究実績の概要 |
近年、矯正治療の固定源として歯科矯正用アンカースクリューが用いられている。植立部位として正中口蓋部は歯根や血管、神経が存在しない安全な領域としてしばしば用いられている。しかし、治療中にアンカースクリューの動揺や脱落が起きる場合がある。そのためアンカースクリューの安定性に影響を及ぼす因子を検討することが重要である。そこで上顎骨口蓋大臼歯部の厚さを計測し、特に口蓋隆起の有無による口蓋の形態的特徴と同部位における最適なアンカースクリューの植立部位と長さを調べることを本研究の目的とした。 上顎骨口蓋大臼歯部の厚さの測定は歯科用コーンビームCT(CBCT)を用い、45人の患者を撮影した。得られた資料は口蓋隆起が認められない患者(TP absent)と口蓋隆起が認められた患者(TP present)の2群に分類した。計測部位は正中口蓋縫合に沿って上顎第一大臼歯近心から遠心20mmまでを前後的、左右的に1mm間隔で計測を行った。 上顎骨口蓋大臼歯部の厚さはすべての部位において、口蓋隆起を認める群が口蓋隆起を認めない群よりも有意に厚かった。さらに口蓋隆起を認める群は口蓋隆起が存在しない領域においても有意に厚かった。また口蓋隆起を認めない群においては上顎第一大臼歯部が第二大臼歯部より有意に厚く、正中部が側方部より有意に厚かった。口蓋骨の最も厚い部位は5.96±0.17mmであった。口蓋隆起を認める群では上顎第一大臼歯遠心部と第二大臼歯近心部が第一大臼歯近心部と第二大臼歯遠心部より有意に厚く、正中部と1mm側方部が2mm,3mm側方部より有意に厚かった。口蓋骨の最も厚い部位は8.21±0.26mmであった。 口蓋隆起を認める症例においては、口蓋隆起が存在しない上顎第二大臼歯遠心部においても上顎骨口蓋部は厚かった。
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