研究課題
初年度は常在細菌の有無が骨格成長に与える影響を調べるため、8週齢の常在菌を保有しないGFマウスと常在菌を保有するSPFマウスで以下の解析を行った。①骨組織レベルでの石灰化状態の比較:両マウスから下顎骨を採取し、microCT解析を行った。GFマウスと比較してSPFマウスの骨密度が低かった。②破骨細胞の比較:破骨細胞のマーカー蛋白である酒石酸耐性酸性フォスファターゼ(TRAP)の血清中濃度を比較するとSPFマウスの方が高く、下顎骨の組織切片上においてもTRAP陽性破骨細胞の骨表面における存在がSPFマウスで顕著に多かった。③下顎骨における比較:両マウスの下顎骨から直接RNAを採取しPCRアレイによる遺伝子発現の比較を行った。SPFマウスにおいて骨芽細胞および破骨細胞の成熟に関与する遺伝子発現の亢進が認められ、これらは特異的プライマーを用いたリアルタイムPCRで確かめられた。骨芽細胞の成熟・石灰化の抑制に関与するオステオカルシン、破骨細胞の活性化に関与するカテプシンKは下顎骨より抽出した細胞溶解液においてもSPFマウスにおける蛋白レベルの亢進が認められた。④頭蓋骨由来初代骨芽細胞における基質石灰化および転写調節因子発現の比較:頭蓋冠より骨芽細胞を単離し、分化誘導培地中で培養を行った。分化誘導開始後5週間でアリザリンレッド染色性がSPFマウスで顕著に低かった。さらに、骨芽細胞における遺伝子発現の変化が転写調節因子の発現の変化に由来するのか調べるため、PCRアレイ解析を行った。その結果、SPFマウスとGFマウス間で顕著な遺伝子発現の変化を認める転写調節因子を認めた。これは常在菌の有無が骨芽細胞内でエピジェネティック遺伝子発現調節を行っている可能性を示唆した。上記の結果から、常在細菌は破骨細胞、骨芽細胞を共に活性化し、骨代謝を活性化している可能性を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
本年度は常在菌の有無が骨格成長に与える影響のうち、骨芽細胞や破骨細胞に与える影響を解析することにより重点をおいた。
次年度以降は常在菌の有無が骨格成長に与える影響のうち、軟骨形成に与える影響を調べることとする。まずは胎児期に与える影響を調べる。外部協力施設にて無菌状態のGFマウス、通常状態のSPFマウスより胎生18日齢の胎児を採取し解析を行う。その後8週齢マウスにおいても同様の解析を行う予定である。
遺伝子内部のシーケンス解析を初年度行う予定にしていたが、年度内に行うことができなかったため。
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