研究課題/領域番号 |
18K17282
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
内田 瑶子 岡山大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助教 (60779742)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / 無菌マウス / 軟骨細胞 / 内軟骨性骨形成 / マイクロCT / RNA-seq |
研究実績の概要 |
平成31年(令和元年)度は母体腸内細菌叢の有無が胎児の骨格形成に与える影響を確かめるため、germ free (GF)およびspecific pathogen free (SPF) マウス18.5日齢胎児の長管骨の比較、および肋軟骨から単離した軟骨細胞の比較を行い、胎児の内軟骨性骨形成過程における母体細菌叢の影響を示す以下の結果を得た。 1.胎児体格の比較およびホールマウント骨格標本の比較:GFマウス胎児、SPFマウス胎児の頭殿長および体重に大きな差異は見られなかった。また石灰化領域、軟骨領域をそれぞれ染色した骨格標本では、GFマウス胎児、SPFマウス胎児の骨格に大きな差異は認められなかった。 2.脛骨の組織化学的解析および脛骨の骨化部の比較:脛骨切片においてGF, SPF間に大きな差異は認められなかった。さらにマイクロCT解析の結果、SPFマウスの方がGFマウスと比較して骨化度が低い傾向があった。 3.肋軟骨由来初代培養軟骨細胞の増殖能および長期培養における基質蓄積能の比較:SPFマウスの方がGFマウスと比較して増殖能が顕著に低かった。さらにSPFマウスの方がGFマウスと比較して顕著に基質蓄積能が低かった。 4.培養軟骨細胞における遺伝子発現の比較:RNA-Seqの結果、aggrecan, 2型コラーゲンmRNAの発現はSPF軟骨細胞で低く、また、Interleukin (IL)-6, IL-17 receptor mRNAの発現はSPFで非常に高かった。IL-6, IL-17は間葉系細胞から軟骨細胞への分化を負に制御することが知られている。これらの結果は、母体の細菌層の存在が胎生期の内軟骨性骨形成を負に制御している可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は腸内細菌叢が骨形成、骨吸収に及ぼす影響についての論文報告を行ったが、今年度はさらに内軟骨性骨形成における影響を調べるため、妊娠GF, SPFマウスより胎児を採取し、骨および培養軟骨細胞の解析を行ったところ、これまで報告のなかった、母体の細菌叢の有無の情報が胎児に伝播していることを示すデータを得た。現在論文作成中で、予定通りに実験は進行している。
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今後の研究の推進方策 |
まず、これまでの結果を論文として報告すること、さらに並行して高齢GF, SPFマウスにおける骨格の変化についても解析を行う予定にしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は論文投稿に伴う英文校正、投稿料の計上と、さらに高齢GF, SPFマウスの購入を予定しており、高額な経費が予想されるため。
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