研究課題
令和2年度は前年度で得られた知見を学会発表し、さらに論文作成を行った。また前年度に明らかになった、母体腸内細菌叢の胎児骨格発育への影響のさらなるメカニズムを解明するため、以下の実験を計画し、実行した。母体腸内細菌叢の存在によって、母体―胎児をつなぐ胎盤に「何らかの因子」が生じて胎児に影響を及ぼすと考え、その「何らかの因子」として細菌が分泌する「細胞外小胞」に着目した。これまでのところ、歯周病菌の分泌する細胞外小胞は,脂質二重膜に包まれており、直径数十ナノメートルと非常に小さいことが明らかになっており,胎盤を通過して胎児に到達する可能性を考えた。また妊娠期における歯周病の有無と低体重出生との相関が疫学研究で示唆されているものの、分子メカニズムは不明であった。妊娠期における歯周病が胎児成長へ与える影響を確かめるため、雌マウスの臼歯を5-0絹糸で結紮し、実験的歯周炎を誘発した。一週間後、雄マウスと交配させ、妊娠が判明したマウスをコントロール群と細胞外小胞投与群とに分け、細胞外小胞投与群には歯周病菌から回収した細胞外小胞を尾静脈から投与した。週2回投与を行った後、胎生18日で開腹し、胎児を採取した。コントロール群と細胞外小胞投与群から得られた胎児を比較した結果、1:細胞外小胞投与群の胎盤重量はコントロール群と比較して少ない、2: 投与群の胎児の大きさはコントロール群と比較して小さい、3:両群の胎児から骨格標本を作製したところ、細胞外小胞投与群は四肢の発育が抑制されていることがわかった。上記結果により、投与した歯周病菌由来細胞外小胞が胎盤を通過した結果、胎児発育を抑制したと考えられる。
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