5-FUによる化学療法における口腔粘膜炎の酸化ストレスの可視化を目標として実験を行った。予備実験の結果、5-FUの投与のみでは粘膜炎が惹起されんなかった。また、粘膜炎が不十分で潰瘍を形成しない報告が多かったため、舌下面に限局して酢酸塗布も併用した。酸化ストレス可視化マウスを用いて、3群に分類した;①コントロール(C)群、②生食腹腔内投与+酢酸塗布群(生食+酢酸群)、③5-FU (50mg/kg) 腹腔内投与+酢酸塗布群(5-FU+酢酸群)。1週間後、酸化ストレスの発光量測定と採血を行った。Diacron-reactive oxygen metabolites(d-ROMs)テスト(酸化ストレス)とOxygen(OXY)吸着テスト(抗酸化能)を行い、血清中の酸化ストレスを評価した。 その結果、酸化ストレス発光量は有意な差を認めなかったが、5-FU+酢酸群(9238±167)、生食+酢酸群 (8954±311)、C群 (8162±157)の順に多い傾向にあった。また、血清中において、d-ROMs(U.CARR)は有意な差を認めなかったが、5-FU+酢酸群 (171±63.1)、生食+酢酸群 (151±28.6)、C群 (119±5.9)の順に大きい傾向にあった。一方、OXY吸着(μmol/ml)は有意な差を認めなかったが、C群 (452±16.6)、生食+酢酸群 (338±13.3)、5-FU+酢酸群 (344±63.1)の順に大きい傾向にあった。さらに、d-ROMsとOXYを用いた酸化ストレスインデックスでは、有意な差を認めなかったが、5-FU+酢酸群 (1.58±1.44)、生食+酢酸群 (0.94±1.06)、C群 (-2.00±0.46)の順に大きい傾向にあった。 以上の結果により、分子イメージングによる酸化ストレス測定は粘膜炎においても有用である可能性が示唆された。
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