本研究は栄養状態や食欲に最も関連する口腔状態の指標やその組み合わせを探索し、口腔状態、食欲、低栄養が相互にどのように関連しているか、またこれらの関連が背景因子の異なる高齢者(地域在住高齢者、在宅要介護高齢者、施設高齢者、認知症高齢者)においてどのように異なるかを検討することを目的とした。このことにより高齢者の低栄養、ひいてはサルコペニア、フレイルの予防に有効となる口腔状態や食欲を考慮した食支援方法作成のための具体的な根拠を示すことができると考えた。 研究計画最終年である令和2年度は、これまでに実施した3か所(香川県仲多度郡まんのう町に住む地域在住高齢者、福岡県糸島市の居宅介護支援事業所の介護サービスを利用している要介護高齢者、通所介護事業所を通じて通所型サービスAを利用している高齢者)の調査で得られたデータをまとめ、解析を行った。その結果、食欲はいくつかの栄養指標と有意な関連が認められたが、口腔の健康状態(現在歯数、未処置歯の有無、嚥下機能、不顕性誤嚥、臼歯部咬合、一日の清掃回数や定期健診などの口腔清掃習慣)とは関連が認められなかった。そこで、食欲の評価指標のそれぞれの因子と口腔の健康状態との関連を検討した。その結果、いくつかの食欲の評価指標の因子と口腔の健康状態との間で関連が認められた。また、要介護認定ありとなしの対象者で比較すると、口腔状態、食欲、栄養状態に差はみられたが、それぞれの集団における口腔状態、食欲、低栄養の関連に違いは認められなかった。
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