研究課題/領域番号 |
18K17290
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
市岡 宏顕 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50739969)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 薬物分布 / 歯 / 質量分析イメージング / 死後変化 |
研究実績の概要 |
生後8週齢のオスのSprague-Dawleyラットにカルバマゼピンを腹腔内投与し、投与15、30、60、90、120、180分後に安楽死させ、歯牙(下顎第1臼歯)および心内血を採取した(N=6)。歯牙において、カルバマゼピンは投与15分後から検出され(5.8 μg / mg)、投与60分後に最大(8.8 μg / mg)に達し、その後、投与後時間の経過とともに減少を認めた。心内血においても、歯牙と同様の時間経過による分布の変化を示し、投与60分後に最大濃度(23.5 μg / mL)を示した。 また、ラットに20、100、500 mg/kg の濃度のカルバマゼピンを腹腔内投与60分後に安楽死させ、ラット歯牙および心内血を採取した(N=6)。歯牙および心内血において、投与濃度依存的に、歯牙および心内血中のCBZ濃度が増加した。 また、ラットに100 mg/kg の濃度のカルバマゼピンを腹腔内投与60分後に安楽死させ、室温にて0, 3, 7, 15日経過した後、ラット歯牙を採取した(N=6)。歯牙から検出された平均カルバマゼピン濃度(μg/mg)は、死後0日で8.8、3日で6.7、7日で8.6、15日で11.8であり、死後経過時間で有意な差を認めなかった。 また、死後0日および15日経過したラット歯牙の未脱灰新鮮凍結切片を作成し、イメージング質量顕微鏡(島津製作所 iMScope)を使用して、光学画像と質量分析(MS)イメージングによるカルバマゼピンの分布画像の重ね合わせから、カルバマゼピンの局在を評価した。MSイメージングでは、死後0日、15日ともに、歯髄腔の部分にカルバマゼピンの高い分布を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年7月から1年間、米国にて長期学外研究を行う予定であり、本研究を1年間中断したため。 本研究を一時的に中断し、海外における研究滞在等に伴う補助事業期間延長申請を行う予定であったが、渡航開始時期の再調整やコロナウイルスの世界的流行により渡航開始時期の延期が必要となり、2019年度中の渡航開始が不可能となり、一時的に中断していた本研究を再開する。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、カルバマゼピンを用いて行った実験と同様の実験を抗菌薬を用いて行う。 また、露髄させたラット臼歯を細菌感染させることにより惹起した歯髄炎発症ラット(Osako et al. Microbiol Immunol. 2009)に抗菌薬を投与し、同様にMSイメージングで抗菌薬の歯髄への分布を観察する。歯髄に移行した抗菌薬の抗炎症作用を確認するために、MSイメージング後の薄切標本を細胞外マトリックス分解酵素であるmatrix etalloproteases(MMPs)等に対する抗体を用いて免疫組織染色する。MMPsは炎症性サイトカインによって発現が誘導され、歯髄組織を破壊し歯髄炎の病態を進行させることが知られている(Eba et al. PLoS One.2012)ので、抗菌薬のMSイメージング像とMMPsの免疫組織染色像の重ね合わせを経時的に比較し、歯髄に局在する薬物抗菌薬の局在とMMPs発現量の動態を解析することで、歯髄に移行した抗菌薬の抗菌作用を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年7月から1年間、米国にて長期学外研究を行うため、本研究を1年間中断する予定であった。そのため、本研究を一時的に中断し、海外における研究滞在等に伴う補助事業期間延長申請を行う予定であった。しかし、渡航開始時期の再調整とコロナウイルスの世界的流行により渡航開始時期の延期が必要となり、一時的に中断していた本研究を行うため、次年度に研究費を使用する。
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