研究課題/領域番号 |
18K17301
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
佐々木 力丸 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (90533307)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中鎖脂肪酸 / 要介護高齢者 / 認知症 / 覚醒状態 |
研究実績の概要 |
本研究では認知症高齢者を対象とし、中鎖脂肪酸(MCT)を利用した栄養指導および摂食嚥下リハビリテーションを行い、覚醒状態を改善し、ひいては栄養状態改善をはかれるのかを明らかにすることで、そのことをもって認知症高齢者の健康増進およびQOLの向上を目的している研究期間3年の研究である。研究初年度は、先行研究として健常者の脳波の測定を行う予定であった。現在、健常者の脳波測定に関しては、基礎データとなりうるデータがまだ集まっていない状態である。 認知症の進行により食事時の覚醒状態が低下し、食事摂取困難となり体重が減少した施設入所高齢者に対し、MCTを摂取させたところ覚醒状態が改善し、食事摂取量が増加した症例を経験したので学会発表を行った。症例は85歳女性、原疾患は脳出血、脳血管型認知症、高血圧であった。初診時のGlasgow Come Scale(以下、GCS)は、開眼(以下、E):4、最良言語反応(以下、V):5、最良運動反応(以下、M):6、合計15点であり、食事は、全粥・刻み食、水分は薄とろみを自力摂取していたが初診から1年9か月後に、食事時の傾眠により自力での摂取が困難とのことで再評価を行った。再評価時のGCSは、E:3、V:1、M:5、合計、9点であり初診時より覚醒状態は低下していた。食事にMCTを添加することを提案し、MCTを5cc/日を4か月継続して使用し、その後MCTを15cc/日と増量した。増量後、GCSはE:4、V:4、M:6となり改善し、食事は一部自力摂取できるようになった。MCTを試験的に導入した施設入所要介護高齢者の覚醒状態の向上、食事摂取量の増加といった結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究初年度に行うべき、健常者の脳波データ採得に関して、脳波には個人差が大きく安定したデータが得られていないため、健常者の脳波データを増やす必要があるため。 また、研究を進めるに際して認知症高齢者に対するMCTオイルの効果測定のため、客観評価のスケールがなく、急遽血中ケトン濃度の測定が必要になり、研究計画を一部修正する必要性があったため。
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今後の研究の推進方策 |
研究初年度に行う予定であった健常者の脳波データの採得に関しては、研究2年次、3年次と継続的にデータの収集を行う。 施設入所認知症高齢者を研究対象にしているため、データ収集中に入院や施設退所、死亡などの事由により、研究継続できなくなる可能性があるため、研究計画書に記載されている対象者よりも多い人数を対象にする必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
中鎖脂肪酸を実際に使用した研究は研究2年次から開始予定であり、研究対象者の血中ケトン濃度を測定する機器を新たに購入する必要があるため。研究2年次には、研究対象者の血中ケトン濃度測定器とその消耗品を研究対象者の人数×測定回数分購入する必要があり、さらには、研究対象者に使用する中鎖脂肪酸を購入する必要がある。また、研究の成果発表に対し、人件費や旅行費で使用する予定である。
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