本研究では認知症高齢者を対象とし、中鎖脂肪酸(MCT)を利用した栄養指導および摂食嚥下リハビリテーションを行い、覚醒状態を改善し、ひいては栄養状態改善をはかれるのかを明らかにすることで、そのことをもって認知症高齢者の健康増進およびQOLの向上を目的している研究期間3年の研究である。 特別養護老人ホームにて食事を経口摂取しており、覚醒状態により食事の摂取量が安定しない4名の入所者と食事を安定して摂取している7名の入所者、合計11名(男性4名、女性7名、平均年齢87.6±8.7歳)を対象とした。覚醒状態が安定しない4名に対して中鎖脂肪酸(以下、MCT)を食事に朝食、昼食、夕食時にそれぞれ、5cc、合計15ccを加え(以下、MCT摂取群)、MCTを加える前後の食事摂取量、体重、覚醒状態、脳波を評価した。調査期間は1人の対象者に対し3か月経過を追った。また、MCT摂取群の4名と安定して食事を摂取している7名(以下、MCT非摂取群)に対して比較を行った。 MCT摂取群において、調査期間の前後の食事の摂取量は、4名中3名が低下していた。体重は、4名中3名が増加をしていた。脳波は、MCT摂取前に食後に覚醒しているものが4名中1名であったが、MCT摂取後は2名が覚醒状態であった。比較対象であるMCT非摂取群7名においては、食事の摂取量はすべての対象者で低下し、体重は7名中1名のみ増加していた。脳波は、評価開始直後、食後に覚醒しているものは7名中2名が覚醒しており、3か月後は7名中3名が覚醒状態であった。MCT摂取群においては、摂取前と摂取後において、体重が増加しているものの割合が多い結果となった。
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