研究実績の概要 |
本研究では,地域在住高齢者を対象として嚥下機能と現在歯数,咬合状態および骨格筋指数との関連について明らかにすることを目的として横断研究を行った.分析対象は,愛知県T村の介護予防事業に参加した高齢者236名(男性88名:平均年齢75.9±7.4歳,女性148名:77.6±6.5歳)とした.嚥下機能の評価には反復唾液嚥下テストを用い,口腔内については,現在歯数および咬合状態を診査し,咬合はアイヒナー分類および臼歯部の上下咬合のペア数(posterior occluding pairs,以下POPs:0~8)を調べた.骨格筋指数は生体インピーダンス測定法により求めた.反復唾液嚥下テスト3回未満の割合は,女性31.8%,男性10.2%であった.また,女性における嚥下機能と2変量の関係で有意であった因子について,二項ロジスティック回帰分析を行った.目的変数を嚥下機能低下の有無(反復唾液嚥下テスト3回以上vs. 3回未満)とし,説明変数として,年齢,骨格筋指数,義歯使用の有無,現在歯数およびPOPsを投入した.因子調整後も,POPsのみ嚥下機能と有意な関連が認められ(P=0.047),1ペア増加のオッズ比は0.80倍(信頼区間 0.64-0.99)であり,POPsが増加すると嚥下機能が低下しにくいことが考えられた.また,追跡調査として栄養状態評価および筋力・筋力量の評価を継続したが,これらを目的変数とした多変量解析において,SP値との有意な関連は認められなかった.自立高齢者においては一定のSP値を維持している可能性が示唆された.
|