研究課題/領域番号 |
18K17306
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
梅崎 陽二朗 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (20778336)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 認知症 / 歯科心身症 / 口腔異常感症 / 咬合異常感 |
研究実績の概要 |
歯科領域におけて不定愁訴とみなされる「歯科心身症」と認知症の関連を探求するために、臨床疫学的な研究を行った。 第一に、口腔内の奇異な異物感や違和感を訴える、口腔異常感症について、606症例のRetrospectiveな研究を行った。本研究では、外来診療録をもとに、年齢や性別の特徴、症状や発症の契機、病悩期間、予後等について照覧し、治療効果に影響を与える因子の同定を行っている。結果、本症患者では高齢女性が多いこと、口腔の症状が単なる精神科疾患の部分症状とは言えない事などが示唆された。また、うつ病の既往がある場合、うつの悪化時に歯科治療を行うと本症発症のリスクが増大することが示唆された。治療に対する反応性については、発症から治療までの期間が短い方が有利であり、早期発見、早期治療が重要であることが示唆された。また、精神科疾患の既往がない方が予後良好であることも示唆された。 続いて、繰り返し歯科治療を行っても、咬み合わせの違和感を執拗に訴え、全身の不定愁訴にまで愁訴が拡がる、咬合異常感(Phantom bite syndrome:PBS)の研究を行った。脳血流SPECT検査を用いて、本症患者と口腔異常感所の患者間で脳機能画像を比較したところ、特異的な所見は認められなかった。PBS症状の部位に着目し、左側のみ、右側のみ、両側の3群で患者の年齢や壊死別、既往歴について比較したところ、左側症状のみの患者では、うつ病の既往が有意に多いことが示唆された。このように、口腔異常感症だけではなく、PBSと中枢における機能異常との関連が徐々に示されてきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた通り、口腔異常感症や咬合異常感と中枢との関連については複数の論文発表ができている。しかし、認知症を研究期間中に発症する症例は比較的稀で、認知症との関連についての発表までは依然として進めていない。
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今後の研究の推進方策 |
上記のとおり、比較的稀ではあるが、口腔異常感症患者で、認知症を発症している症例も経験しており、症例の集積が進めばRetrospectiveな報告が可能となると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
認知症と口腔内の不定愁訴に関する論文を発表する予定で、投稿料として使用する予定である。
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