これまでの研究活動を継続し、歯科領域において不定愁訴とみなされることの多い、「歯科心身症」の評価尺度を用いて、認知症との関連について探索した。本年は、これまでの研究活動のまとめとして、外来患者の臨床統計を行い、歯科心身医学会誌にて発表した。論文タイトルは「高齢者歯科外来における2017,2018年度の歯科心身症患者153名の臨床統計的検討」である。本論文は、当科外来に受診した歯科心身症患者のDemographic dataをまとめたもので、治療予後についても言及している。153名中、119名は女性で、大半が女性であった。歯科心身症のなかでも、舌痛症が最多で8割を占めていた。病悩期間は平均24か月であった。発症の契機としては、歯科治療が25%程度で、その他は特発的であった。約7割で薬物療法の効果が得らえれており、予後に関するロジスティック回帰分析を行うと、病悩期間が短い方が予後良好であることが示唆された。認知症既往のある患者は1名いたが、歯科心身症に用いる問診票によって事前に判明していたため、かかりつけ内科医と適切な連携が取れた症例であった。さらに、本論文では認知症に限らず、歯科心身症に使用している問診票の有用性や、今後の教育体制等についても考察したものであった。 昨年度、一昨年度の研究内容と併せて鑑みると、口腔不定愁訴(歯科心身症)に使用している問診票を用いた診察を行う事で、認知症の既往には早い段階で探知できることがわかった。脳画像所見では、歯科心身症は認知症と異なる疾患群ではあるが、積極的に本問診票を活用していきたい。
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