これまでの研究期間において、分析対象としたデータベースの利用環境整備、及び医療資源の配置に関連する政策課題と対応したリサーチクエスチョンに応じた分析を実施してきた。最終年となる本年度では、これらの成果報告としてとりまとめるとともに、次の研究課題として設定すべき事項について纏めた。 第一に、NDBを活用した医療提供状況の実態把握を目的とした研究の一環として、高血圧患者に対する処方実態、透析の新規導入患者の季節性に関する記述研究を実施した。NDBが保有する悉皆性という利点を活かし個人追跡ID技術を活用しながら、処方人数や透析の実施人数をその患者属性とともに集計した。本年度においては、過去に提供を受け実施した解析結果を論文にまとめ、各々論文として国際誌に採択された。 第二に、県から提供を受けた、医療・介護・特定健診データ、および被保険者情報利活用の一環として、遠隔診療提供状況と利用患者特性の分析をした。遠隔診療の普及は、国家として取り組む課題でもあり、COVID-19流行によって、その必要性は高まったことから、制度改定が進められた診療行為である。分析の結果、2020年4月以降、国保・後期高齢者医療における遠隔診療利用は増加しているが、普及トレンドに変化がないことが明らかとなった。本分析は、これまでの研究期間において平時より構築してきた分析基盤・解析技術を活用することで、政策課題に対してタイムリーな情報提供を行うことが可能であった。 本研究において、医療・介護・健診データ、および被保険者情報の有用性を確認することができた。一方で、その殆どの研究は、データを横断的に使用した記述研究にとどまっている。今後、政策や医療・介護による介入を評価するための研究として、今後の研究において縦断的にデータを利用した効果検証分析を進めていく予定である。
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