研究課題/領域番号 |
18K17312
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
松本 暢平 千葉大学, 医学部附属病院, 特任助教 (30737755)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コンピテンシー修得感の規定要因 / 正課内外の学習と活動 / 教員とのかかわり |
研究実績の概要 |
平成30年度前半は、当初の研究計画にもとづき、「IRのために収集された医学生の能力や行動・意識、出自に関するデータを用いることで、学生が能力を伸ばすタイミングや契機を明らかにできるのではないか」という「問い」のもと、千葉大学医学部で第6学年の学生に対して毎年度終盤に実施している「卒業時調査」のデータを分析した。卒業までに獲得することがコンピテンシー(卒業までに獲得することが求められる諸能力)の修得感を高く有する学生の特質を、統計学的手法(多変量解析)を用いて検討した。その結果、正課学習への積極的な参加に加え、教員とのかかわりを多く持つことがコンピテンシーの修得感を高めるうえで大きな効果を有することが確認された。この研究結果を、平成30年8月の第50回日本医学教育学会大会において「千葉大学医学部の事例にみる、医学生のコンピテンシー修得感の規定要因」として口頭発表した。 平成30年度後半は、上記学会での発表をふまえ、分析モデルを変更し、以下の5種、すなわち、(1)教育に対する学生の満足度、(2)達成感、(3)コミュニケーション・スキル、(4)医師として望ましい態度(5)倫理観の修得感を高く有する学生の特質を検討した。その結果、コンピテンシーの修得感と同様、正課学習への積極的な積極的な参加に加え、教員とのかかわりを多く持つことが、満足感や達成感を高めるうえで大きな効果を有することが確認された。上記(1)および(2)に関する研究結果について、平成31年4月に開催される国際学会(WFME 2019)にエントリーし、採択を得た。上記(3)から(5)に関する研究結果について、平成31年8月に開催される国際学会(AMEE 2019)にエントリーし、成果発表の機会を得る予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、当初の計画では、「医学部卒業時調査」の結果分析に関する第50回日本医学教育学会大会での発表をふまえ、すみやかに学生に対する面接による聞き取り調査を実施する予定であった。しかし、上記学会大会での発表内容について、多くの質疑と有益なアドバイスが寄せられ、上記調査について、より詳細な検討を行う必要性と意義が生じた。そのため、平成30年度後半をその分析に充て、聞き取り調査の実施を遅らせた。なお、当該調査は、平成31年度にも実施する予定であるため、その分と合わせ、集中的に実施する。 また、本研究では、「卒業時調査」に加え、第6学年以外の学生に対してもアンケートを用いた調査を実施する予定としていたが、当該調査についても、上記調査の追加検討を行うことを優先したため、平成30年度には実施せず、平成31年度に実施することとした。 上記の2つの理由から、当初の想定よりやや遅れているが、平成30年度後半に検討した知見をふまえ、より詳細な仮説のもとに、予定している聞き取り調査を実施できることが想定される。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、遅れている学生への聞き取り調査を集中的に実施する。本研究は、混合研究法(ミックスド・メソッド)を用いて医学生の能力獲得のプロセスやタイミングを検討することを計画しているが、学生への聞き取り調査の知見をふまえ、すでに実施した「医学部卒業時調査」の再解釈を行い、両調査の知見をすり合わせ、研究の総括を行う。詳細は以下の通りである。 平成31年度前半は、学生への聞き取り調査を実施し、医学部での学習を振り返り、自身が能力を伸ばすにいたった契機、在学中の正課内外での学習や活動のとりくみ方を尋ねる。当該調査は、当初の計画では、平成30年度にも実施する予定であったため、平成30年度に第6学年に在籍していた学生も対象として含まれる。彼/女らの多くは現在卒後臨床研修を実施しているが、必要に応じて彼/女らにも調査を依頼し、協力を得られれば調査を実施する。 平成31年度後半は、当該年度前半に開始した学生への聞き取り調査のテープ起こしと分析を実施し、その知見と平成30年度に分析した「医学部卒業時調査」の知見との比較を行う。比較をふまえ、研究を総括し、報告書を作成する。本研究を通じて得られた知見について、研究期間終了後となるが、国内外の学会(第52回日本医学教育学会およびAMEE 2020)での発表することを予定している。加えて、知見を学術論文としてまとめ、医学教育にかかわる学術雑誌(『医学教育』、"Medical Teacher"等を予定)に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に実施する予定であった学生への聞き取り調査を平成31年度に実施することとしたため。当該調査は、当初の計画において、平成31年度にも実施する予定であったため、両年度分を合わせ、集中的に実施する。
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