研究課題/領域番号 |
18K17315
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
清水 郁夫 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 助教 (60716231)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 協調学習 / 互恵的相互依存 |
研究実績の概要 |
本年度は、協調学習環境における学習者の互恵的相互依存を測定する尺度(SOcial interdependence in Collaborative learning Scale:SOCS)を開発した。初等教育などでの先行研究をもとに、37項目からなる尺度項目の原案を策定した。尺度の各項目は日英間の双方向翻訳を行い、文言の同一性を保つよう配慮した。次に、紙面またはオンラインアンケートフォームを用いて、8カ国から関係者30名(教育専門家10名、協調学習の経験が豊富な医療系教員10名、協調学習による授業を経験した医学生10名)から意見を聴取し、修正Delphi法によるコンセンサス策定研究を実施した。アンケートフォームでは、原案の各項目がどの程度適切であるかを1~5の5件法で意見を聴取するとともに、言葉の言い換えや追加すべき選択肢について提案をつのり、項目を取捨選択した。2巡目終了時点で16項目からなる第2案を持って回答が収束したため、策定研究を終了した。 その後、尺度の妥当性を確認するため、協調学習の経験のある医療系学生(n=264)を対象に調査を実施し、確証的因子分析を実施した。239名から回答を得た(回答率90.5%)。策定研究で得られたSOCSのうち、回答結果の相関係数が高い1項目を削除し、15項目で確証的因子分析を実施したところ、互恵的相互依存理論に合致する3因子構造モデルにて最良の結果を得た。各因子間の相関は中程度であり、α値も良好であった(outcome = 0.854, means = 0.786, boundary = 0.876)。 また併行して、H31(R1)年度に予定していたPBLを受講した学生へのインタビューを前倒しで着手すると共に、今後の研究対象となる授業を構築する準備のために情報収集を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施予定であった研究は完了し、研究成果を年度内に投稿済みである。またH31(R1)年度以降に予定していた研究にも着手できている。
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今後の研究の推進方策 |
申請時点ではPBL, TBLといった協調学習教育方略単位での探索を予定していたが、次年度はチーム医療への配慮がより求められる多職種連携教育(IPE)を対象とすることにした。IPE環境においてH30年度に開発した尺度が多職種連携への視点とどのように関連するかを検討する予定である。また、H30年度の成果を論文化するとともに、インタビューについても飽和した時点で学会等での報告および論文化を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由) 申請時には、尺度策定研究および妥当性研究の参加者に謝金を支払う予定であったが、実施過程において、研究結果に利益相反が生じうるとの懸念が寄せられたことから、無償で実施することとした。さらに、学術集会への参加費用を計上していたが、参加を中止したため、費用を削減することができた。 (次年度使用計画) 「今後の研究の推進方策」に記した研究を遂行すると共に、学会や論文での研究成果の発表を行う。また、協調学習を導入できる新たな対象やその授業内容の情報収集を行う。30年度からの繰り越し分については、消耗品費として使用する予定であるほか、3年目に予定していた研究を前倒しにできるようであればその費用に用いる。
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