研究課題/領域番号 |
18K17315
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
清水 郁夫 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 助教 (60716231)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 互恵的相互依存 / problem-based learning / 協調学習 |
研究実績の概要 |
本年度は、協調学習の代表的方略であるProblem-based learning (PBL)において,学習者が互恵的相互依存をどのように構築していくかを探索した。PBLにおける先行研究は主に学習成果に着目しているものの,PBL実践の本質的改善をもたらすためにはその背景にある協調的態度や社会的相互依存について理解を深める必要がある。そこで本研究では,PBLにお いて学習者が社会的相互依存を深める(もしくは損なう)特性と,それらがどのように働くのかを探索した。A大学の臨床実習プログラムの一環で実施されたPBLに参加した学生のうち参加同意を得た26名にフォーカスグループを実施した。半構造化質問によって得たデータを逐語録化し,グラウンデッドセオリーに基づき分析した。 学生は学問的関心に基づき学びを深めようとする「学術的探求」と同時に,学ぶべき事項をできるだけ速やかに修得したいという「効率性への欲求」を抱いていた。これらは互いに対立的にも働きうるが,<事例から抱いた関心>を整理し,< 効率的な進捗方法>を探ることを通して,<問題解決の意志の共有>と<互いの貢献を期待>を行い,<学修目標の相互補完>に到達していた。協調学習環境としてのPBLの手順の中に,社会的相互依存をもたらす過程が内包されていること を示すことができた。同時に,PBL中の討議が十分成立しない場合には,これらの特性について見直しを図ることで改善が期待できる。例えばわが国を初めとする東アジアでPBL方略を用いた学習の導入が不調になる場合,総括的評価を重視する余り効率性を過剰に強調し,学術的探求とのバランスがとれていない可能性があり,評価計画の見直しを同時に行う必要がある可能性が示唆された。この成果はBMC Medical education誌に論文発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究対象である協調学習プログラムがコロナ禍で行いづらくなり,とりわけR2年度前期は全面的にオンラインになったため,計画はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
上記理由で研究が遅れているため,延長申請をしてR3年度も本研究課題を継続することとした。コロナ禍でも実施できるように計画に若干の変更を加え,オンライン環境での協調学習を対象とした前向き比較試験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由) コロナ禍のためいくつかの計画変更を要した。まず予定していた学会が現地開催されなくなり,参加費が減額されるとともに旅費が不要となった。また,研究計画に遅れをきたした。 (使用計画) R3年度に延期した分の研究を実施すると共に,学会発表,論文投稿を行う。
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