研究課題/領域番号 |
18K17325
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
高橋 佳苗 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (80726761)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ランダム化 / 陽性的中率 / 陰性的中率 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は以下の通りである. (目的1)小規模臨床試験における割付手法の選択に関する実用的なガイダンスの提案:①治療効果を連続値とした場合,②治療効果を2値とした場合,③治療効果を生存時間とした場合 (目的2)小規模臨床試験におけるスクリーニング検査法の比較のための推奨される解析手法の提案:①既存の手法の性能比較,②正確検定法の開発,③優越性の検定と非劣性の検定を同時に行うデザイン 目的1の①は昨年度までに完了している.②③については,昨年度に引き続き,学会発表を目指し文献レビューおよびシミュレーションを進めた. 目的2に関して,①②は昨年度までに完了している.今年度は,昨年度開発した陽性的中率と陰性的中率に対する非劣性検定を用いて,③の内容に本格的に着手した.まず,陽性的中率と陰性的中率の優越性を同時に検定する手法を検討し,その結果を14th International Conference of the ERCIM WG on Computational and Methodological Statistics (CMStatistics 2021)にて発表した.さらに,上記の発表内容をもとに,陽性的中率と陰性的中率の優越性を同時に検定する手法に,さらに非劣性検定を組み合わせた手法(目的③に対応するもの)を開発し,ENAR 2022 Spring Meetingにて発表した.上記の内容については,すでに論文化にも着手している.また,目的2の内容を発展させ,陽性的中率と感度の調和平均であるF1スコアの多値分類版として提案されているmicro-averaged F1およびmacro-averaged F1の信頼区間の導出についても研究を進め,今年度,国際誌に論文が採択された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的1については,当初は一般的に用いられている割付手法のみを対象とし,シミュレーションを行い小規模臨床試験に対し適切な割付手法を検討する計画であったが,より実地で役立つ研究とするため,近年開発された新しい割付手法も取り入れ,比較検討することとした.だが,文献レビューやシミュレーションを進める中で,研究計画時に想定していたよりも提案されている割付手法の種類が多く,その内容も複雑であること,および,本研究の目的と類似する論文も発表されており,それらの整理に時間を要している. 目的2については,2021年度までに達成すべき内容についておおむね結果がまとまり,論文も採択されている.現在取り組んでいる目的③についても,論文化を進めており,2022年度中に国際誌に投稿できる見込みである.さらに,目的2を発展させ,micro-averaged F1およびmacro-averaged F1の信頼区間導出についても研究を進め,今年度論文化することができた. 目的1について上記の理由により進捗に遅れがみられるが,目的2について当初の計画以上に進展しているため,区分(2)とした.
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今後の研究の推進方策 |
目的1については,小規模臨床試験における割付手法の選択に関する実用的なガイダンスの提案:②治療効果を2値とした場合,③治療効果を生存時間とした場合 が未達成である.引き続き文献レビューやシミュレーションを進め,既存の研究とは異なった視点での,小規模臨床試験における有用な割付手法のガイダンス作成を目指す. 目的2については,今年度ENAR 2022 Spring Meetingにて発表した,陽性的中率と陰性的中率の同時優越性検定に非劣性検定を組み合わせた手法についての研究結果を論文化し,今年度中の採択を目指す.さらに,目的2の内容を発展させ,陽性的中率および感度の多値分類版として現在提案されているmicro/macro averaged recallおよびmicro/macro averaged precisionの検定手法の開発についても研究を進め,43rd Annual Conference of the International Society for Clinical Biostatistics (ISCB2022)にて発表予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で,今年度参加した海外学会(CMStatistics 2021およびENAR 2022 Spring Meeting)が全てハイブリッド開催となり,感染対策のためいずれも国内からのオンライン参加とした.このことにより,旅費費用が予定より大幅に減額となり,次年度使用額が生じた. 旅費に関しては,8月にイギリスで開催予定のISCB2022での研究発表が決定しており,参加費・旅費等を計上する予定である.さらに,12月にイギリスで開催予定の15th International Conference of the ERCIM WG on Computational and Methodological Statistics (CMStatistics 2022)での発表も計画している. また,小規模臨床試験のデザインおよび解析に関し最新の知見を得るため,計量生物学会,日本臨床試験学会等が主催する年会やセミナーへの参加も予定している.
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