研究課題/領域番号 |
18K17328
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
津田 哲也 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 助教 (50613014)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 失語症 / 認知症 / 語彙・意味的知識 / 評価法 / コミュニケーション障害 |
研究実績の概要 |
人間関係や通信技術が複雑化した現代では、言語機能やコミュニケーション能力が欠かせない。しかし、この能力は脳損傷に脆弱な語彙・意味機能など高次脳機能を基礎としており、脳損傷の結果、失語症や認知症といったコミュニケーション面の機能低下が生じやすい。 本研究の目的は、語彙・意味的知識構造の分散モデルに基づいた、新たな評価法の開発およびその有効性を検証すること、高齢期のコミュニケーション障害者における語彙・意味的知識構造レベルでの障害メカニズムを明らかにすることである。 本研究の前半は新課題の開発および健常高齢者の語彙・意味知識構造のデータ(norm)を定めることを目指す。後半は得られた基準データと認知症者や失語症者が示す成績を比較し、加齢およびコミュニケーション障害者における語彙・意味的知識構造の変容の有無、および程度や特徴について検証する。 2018年度に実施した事項は概ね以下の通りである。①国内外の意味検査の素材や成果物を収集し、言語刺激やその精度について整理した。②県立広島大学研究倫理委員会で本研究実施のための承認を得た。③録画・録音機器と音声入力ソフトの選定を行なった。また、実験環境の整備のため、各種心理実験ソフトウェア、画像取り込み機器を購入した。④サンプル言語刺激を用いた予備実験を行なった。⑤言語刺激選定のために失語症者らを対象にした言語理解力評価についても調査を行い、言語理解障害が重症な場合を想定した言語素材の資料を得ることができた。今後は、これらの検討結果を踏まえて本実験の準備を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学会や学術誌で公表するには至っていないものの、実験に必要な備品や機器は概ね揃い、サンプル刺激を用いて数例の予備実験を実施することができた。当初予定していたスケジュールは概ね実施されたものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度以降は、予備実験の結果を整理し、本実験用の言語刺激を試作する。これらを用いて、健常若年群・健常高齢群対象に、課題内容が各世代間で成績差なく実施できることを確認する。この時点で問題点などあれば随時、提示法や刺激内容を変更し、得られた反応をもとに健常高齢者の基準データ(norm)を定める。2019年度内に本実験課題の完成を目指す。 さらに、試作語リストを用いた実験用本課題は、通所リハビリテーションなどの介護施設や病院などの協力機関にて、失語症者や認知症者に被験者となっていただく。得られたデータと健常者で得られたデータとを比較する。また、その際に知能検査や言語検査も同時に実施し、新たな評価課題との関連についての検証も行う。得られた成果は関連学会や会議にて公表していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
該当年度は実験開始のための機材整備に終始し、被験者が参加する形での本実験には至っていない。このため、該当年度内では、関連学会や会議への参加費およびこれに関する旅費は発生しなかった。同様に被験者や実験協力者への謝礼なども不要であった。 来年度以降の計画では、実験協力者への謝礼、関連学会への旅費や参加費、専門家らを招いての実験指導にかかる謝礼などを計上する予定である。
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