研究課題/領域番号 |
18K17329
|
研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
尾形 倫明 東北医科薬科大学, 医学部, 助教 (60633675)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 在宅療養 / 人生の最終段階 / 在宅での看取り / 不安要因 / 社会調査 |
研究実績の概要 |
本研究は終末期の在宅療養における不安要因について明らかにすることを目的とした社会調査研究である。今年度は既存のデータである東北6県の住民に対する質問紙調査(医療・福祉と暮らし、人生観に関する意識調査2015)を予備調査として分析した。まず在宅療養を想定し看取りが必要になった際に不安と思う要因を11種から複数挙げてもらい合計値を求めた。要因は以下の、1 往診してくれる医師がいない。2 訪問看護体制が整っていない。3 訪問介護体制が整っていない。4 24時間相談にのってくれるところがない。5 介護してくれる家族がいない。6 介護してくれる家族に負担がかかる。7 症状が急に悪くなったときの対応に自分も家族も不安である。8 症状が急に悪くなったときに、すぐ病院に入院できるか不安である。9 居住環境が整っていない。10 経済的に負担が大きい。11 その他、であり数が多いほど不安が高いと仮定した。 次に相関分析、単回帰分析を用い、不安要因が増すと考えられる項目を探索的に明らかにした。 その結果、東北六県間で不安の数に関する違いは無かったが、市町在住者と比べて村に住む者では不安が高いことが分かった。終末期の療養生活における不安を高める要因として、女性、高齢、看取り経験が有ること、様々な不安感(生活、失業、収入、生きがい)があること、ソーシャルキャピタル面では地域への信頼が薄いこと、普段から話し相手がいることなどと関連があった。不安を下げる要因としては、高学歴、世帯収入が高い、性別役割分担意識が高いことだった。無関係だったのは個人所得、同居人数、看病や世話してくれる人の存在などであった。 村に住んでいると不安が高まるので過疎地域での在宅療養の基盤整備や、世帯所得と相関するので診療報酬のあり方も議論されるべきであろう。学歴は情報格差に関わると予想されるので正確な情報を伝える手段も求められる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまで、地域の公開データを集めるなど研究を進めてきたが、本来、今年度は社会調査を行う予定であった。衆議院選挙もあり選挙人名簿の閲覧ができなかったタイミングとが重なったことも理由の一つである。しかし新型コロナ感染症の流行が収束せず第6波が到来するなど、研究者自身の感染への不安から人との接触を最小限にしたかったこと、所属研究機関の行動制限や、住民、調査員の感染対策や人との接触に対する拒否感が残っており東北6県の各地に赴いてフィールド調査をすることができなかった。また、研究者間で対面での作業やディスカッションができなかったため、調査に関わる作業ができないなど、社会調査を行う研究には困難があった。加えて今年度、宮城県内の大学の共同研究者が大病で離脱してしまい、共同で制作していた調査票が完成レベルには不十分であったことなども研究が遅れている理由として挙げられる。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度も参議院選挙が予定され選挙人名簿にアクセスできない期間があること、新型コロナ感染症の流行による行動制限の可能性も視野に入れて、調査方法を各住戸に投函後、調査員が訪問して行う留め置き型の質問紙調査から、人との接触をしないWEB調査に切り替えることで研究を遂行する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度も感染予防、人流抑制のため研究目的で移動することが減り旅費の支出が激減したこと、学会、研究会もオンライン開催になり東京に行かなくとも済むようになったこと、参加費、消耗品、書籍、サブスクリプション型のアプリケーションなどを自費で賄ったため今年度の支出が減少し余剰金が大きくなった。また、本来は社会調査を行う予定であったが、新型コロナ感染症の流行が収束せず第6波が到来するなど、所属研究機関の行動制限や、住民、調査員の感染対策や人との接触に対する拒否感が残っており東北地方の各地に行って調査をすることができなかった。また衆議院選挙があり選挙人名簿の閲覧ができなかったことも理由の一つである。 次年度も新型コロナ感染症による行動制限や参議院選挙の関係から留め置き調査の実施は難しい可能性がある。そのため、調査員を使った紙の留め置き調査から、人との接触の不要なWEB調査に切り替える予定である。調査方法の変更により調査費用が減り助成金に残金が生じた場合には、再延長で追加調査に充当する。不可能な場合には差額を返還の予定である。
|