研究実績の概要 |
研究期間を通じて住民対象の調査を実施すべく準備を進めたが、COVID-19の蔓延による対人調査の自粛やその期間の人件費上昇による調査コストの上昇などによって遅延していた。今年度はWEB調査への変更を図り、結果を得た。東北6県に住む900人(男性62.2%、女性37.8%)から回答を得た。在宅医療を受けた経験は自宅で経験のあるものは2.6%にとどまっていた。同居しない家族を含めても3.6%にとどまった。希望する場所で最後を迎えられるか不安のある者は58.3%であった。最後まで自宅で療養したいものは12.9%で、最後まで自宅で療養できると回答したものは9.8%で最後まで自宅で療養できないと考えるものは51.3%であった。その理由として「介護してくれる家族等に負担がかかる」56.1%、「経済的に負担が大きい」45.0%であった。また、自宅で療養を行う際の療養の支払意思額額について仮想評価法を用いて推定したところ中央値は50,000円/月、平均額は48,831円/月であった。 厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」:R4年調査の結果では、自宅で最後を迎えたいものは43.8%であった。自宅以外で最期を迎えることを選択した理由のうち「介護してくれる家族等に負担がかかる」74.6%。「経済的に負担が大きい」は13.7%であった。東北地方に住む住民は家族への負担よりも、在宅療養の経済的負担が大きいと考えていることが明らかとなった。 東北地方の住民は全国比で経済的負担への不安感が高く、自宅療養で許容可能な自己負担額の推計値は50,000円/月と、他の調査における実際の療養額(約7万円)と開きがあった。東北地方で在宅療養を普及させるには、サービス普及によって家族の介護負担感を解消することと並行して、住民に対して経済的な不安感を取り除く戦略が欠かせないことが示唆された。
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