研究課題/領域番号 |
18K17331
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
千葉 宏毅 北里大学, 医学部, 助教 (90713587)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エンドオブライフケア / コミュニケーション / 対人援助 / self-perceived burden / 教育効果 / ロールプレイ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、1.患者のもつ他者から世話を受ける負担感軽減につながる援助的なコミュニケーションとは何か、2.EOLケア教育によって、ケア提供者のコミュニケーションはどう変わり、学習後のコミュニケーションはどのように受け止められるか(評価)である。1,2は相互に補間し合い、1の結果を用いて2の検証結果を解釈をする。1はStudyⅠ、2はStudyⅡとしてプロトコールを構築した。 StudyⅠとして他者から世話になることの負担感(SPB)について患者へインタビューを行い、どのようなプロセスを経て他者から世話になってもよいと感じられるように変遷していったかそのプロセスと構造を明らかにする。StudyⅡではStudyIで立てた仮説をもとに、患者の負担感が軽減するような援助的コミュニケーションの研修を受講した群と受講しないコントロール群とで比較し、研修の効果を検証することを目的としている。現在、StudyⅠについて倫理審査の承認を得て対象者のリクルートをすすめているところである。StudyⅡについては今後倫理委員会の承認を得る予定である。 特にStudyⅠの該当患者のリクルートはタイミングも関わることから、協力医療機関との連携が重要である。現在在宅医療に特化しエンドオブライフケアを実践している診療所と密に連携を取っている。StudyⅡについては、ロールプレイを行う際に模擬患者から協力を得るため、医学的、社会的、心理的、文化的等多角的な観点でシナリオを検討し、ストーリー性に相互の矛盾がないかを精査している最中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
6月半ばに学内倫理委員会に申請を提出し、7月25日に本研究に関するプレゼンテーションを行った。10月に審査結果が通知されたところ、StudyⅠは患者にインタビューを実施するため「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に該当するが、StudyⅡは健康人を対象とし模擬患者とのロールプレイ実施によって実験的にデータを収集することから、教育及び業務改善の研究に相当するため、学内倫理委員会では審査できないとして、StudyⅠのみ承認、StudyⅡは審査対象外という判断となった。 本学倫理委員会によるStudyⅡを審査対象外とする結果に対し、研究責任者、研究協力者とも大きな疑問を感じ、慎重に考えて研究を開始しなかった。その後研究倫理に造詣の深い複数の研究者に、倫理委員会が出した判断について相談し、12月末に当該倫理委員会に対し不服申し立てを行って再審査を依頼することにした。2019年1月末に再度StudyⅡの内容についてのみ文書と口頭をもって審査会で説明を行ったが、当該倫理委員会では「本学の倫理委員会は人指針を法的根拠にしており、教育に関わる研究を判断するのはむしろ越権行為である。」「教育研究に関する倫理委員会はどの大学にもない。」と審査委員が判断したため、最終的に審査対象外という結論に至った。 研究代表者としては「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に厳密に該当せずとも、高等教育機関として研究倫理の観点から審査対象であり、正式な承認が必要な事案と考えている。したがって現在新たにプロトコールを整え直し、本学以外の倫理委員会(学会の倫理委員会等)に提出すべく準備を行っている。このような事情から残念ながら研究自体が遅れる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
StudyⅠについては、在宅医療を専門に行っている各地の診療所を中心とした団体(一般社団法人全国在宅療養支援診療所連絡会、および一般社団法人全国訪問看護事業協会など)に広げ、対象となる患者についてリクルートの協力を依頼し、該当する患者へインタビューを実施する。 StudyⅡについては、専門的な模擬患者団体(JaMITAC)と相互の打ち合わせを数回実施しており、ロールプレイで用いるシナリオについて検討している最中である。それらの準備を行いつつ、あらたに学外の倫理委員会に申請を提出する準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の物理的な実施環境(解析用のPC、実験で使用するタブレット、質的分析のソフトウェア)を整えることが出来たが、実質的に患者調査が進んでいないため、その際に発生する旅費(調査先に出向くため)、テープ起こし等(インタビューデータのテキスト化)の費用が発生しなかった分が次年度使用額が生じた理由と言える。今後はStudyⅠを優先して進めていくため、調査にともなう支出が発生する。またStudyⅡについては専門の模擬患者団体にシナリオ構築、模擬患者の標準化作業、ロールプレイの実施において業務の一部委託にともなう支出が生じる予定である。
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備考 |
現在成果を発表するには至っていないが、研究チームのメンバーがそれぞれ取り組んでいる研究についてホームページを立ち上げて公表している。
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