研究課題/領域番号 |
18K17331
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
千葉 宏毅 北里大学, 医学部, 講師 (90713587)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | self-perceived burden / end-of-life care / 援助的コミュニケーション / オンライン面談 / パフォーマンス評価 / 患者視点 / ロールプレイ / 混合研究法 |
研究実績の概要 |
本研究の中間報告として言える事は、1)研修参加によって会話の中で傾聴的な技法を用いた受け答えの習得が推測された、2)傾聴技法を用いた会話であっても患者視点の評価が高いとは言えない、という2点である。研修を受講した後の看護師の発話では、研修会で学んだ援助的コミュニケ-ションの技法がおおむね表出する傾向があった。一方研修前の看護師の発話においてはその表出が乏しくかったことから、研修によるコミュニケーション技法の獲得があったものとみなせる。しかし一方で模擬患者による患者視点の評価においては、コミュニケーション技法の獲得が評価を上げるものとは一概に言えない可能性が推測された。研修会受講前・後の看護師は、年齢、性別、臨床経験年数、現施設勤務月数、看取り経験人数のすべてにおいて、二群で比較した際に統計的な差はなかった。さらに緩和ケアに関する複数の尺度(知識、実践尺度、自信と意欲、困難感)、傾聴態度尺度、共感尺度、自尊心尺度においても両群で差がなかった。しかし、模擬患者による主項目評価であるSPBS(Self-perceived burden Scale)では、受講後看護師との面談においてSPBSが有意に高いが分かった。研修受講前の看護師と面談するよりも、研修受講後の看護師と面談したほうが「他者から世話になることの負担感」が大きい傾向であった。現時点のこの結果は、本研究実施前の仮説と反したものであることから、新たな知見を得る可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度はStudyⅡ(研修前、もしくは後の看護師と模擬患者によるロールプレイの実施から、研修会受講の効果と課題を推定する)を中心とした調査を継続し、25のデータを得た。そのため、2020年度に収集した13データに加え38データとなった。目標に対する現時点のデータ収集の到達率は現在約93%となった。引き続き研究参加者となる協力者の募集を実施しているところである。現在までに取得したデータはすべてデータ入力を完了させ、解析を行うためのデータクリーニングも実施し、中間的で一次的な集計を実施した。 StudyⅠにおいては、患者遺族へのインタビューを実施したものの、2021年度中の新型コロナウイルス感染者数が増減を繰り返したことで、インタビューの機会を設定するのが困難な状況にあった。そのため現地・対面によるインタビューは1回にとどまった。その後も電話やオンラインによるインタビューの実施も検討したが、対面でのインタビューのほうがより細かな質的なデータを収集できることから、今年度は実施に至らなかった。これまで実施したインタビューデータは、逐語録として書き起こしを行った。
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今後の研究の推進方策 |
StudyⅡについては、本研究の目標データ数40に向けて本年夏季(7月頃)までに全データ収集を終え解析を実施する。特にロールプレイ時の録画データ(動画映像)から質的データを抽出する作業に時間を要するため、収集済みデータセットから順次行っていく。このデータを用いることで、受講前・後の看護師によるコミュニケーションパフォーマンスを計量的に扱うことが可能となり、模擬患者の評価、オブザーバーの評価と混合させ、研修効果の言及と課題抽出を行う(10月まで)。研修会の効果の是非といった一義的で総括的な評価よりも、形成的評価として今後実施される研修会の教育プログラムに対する建設的なフィードバックを目指した活動も検討する予定である。またStudyⅠにおけるSPBの多角的な解釈について、可能な限り患者、家族もしくは遺族、医師、看護師等へのインタビューを追加し(12月まで)、StusyⅡの解析結果の解釈を行う。来年2月に論文化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた大きな理由として考えられるのは2つある。1つ目は新型コロナウイルス感染症が蔓延する以前において本研究の倫理審査に時間を要し、研究が遅延したことである。2つ目は新型コロナウイルス蔓延に伴いデータ収集方法を変更せざるをえず、実施計画の見直しが必要であったことと、蔓延によってデータ収集活動に制限(自粛等)が生じたことである。このような複数の原因が重なり研究全体が遅延したことで、当初より研究費の使用に遅れが生じたことが理由である。今後は追加データ収集にともなう調査・旅費に関する支出、データ入力等での支出を予定している。特に音声、映像からテキストデータを入力する際に専門業者へ委託する必要がある。加えて欧文論文化にともないネイティブチェックの予算も見込んでいる。
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