研究課題/領域番号 |
18K17332
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
澤野 充明 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (00796104)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 冠動脈疾患 / カテーテル治療 / リスク提示 |
研究実績の概要 |
本研究は、現代の冠動脈カテーテル・インターベンション術(以後PCI:Percutaneous Coronary Intervention)を実施する医師に対して、術前背景情報から予測される患者個別の予知・予防可能な周術期三大合併症(可能ならば回避したい大量出血、腎機能低下、人工透析導入)の発症率を提示し、診療行為および転帰が変化するかを検証する疫学研究である。 2019年度は慶應義塾大学病院および川崎市立川崎病院でのPCI診療実態を臨床研究コーディネーターとともに参加同意を確認しながら、随時診療記録を専用ウェブサイト上に構築された調査票へと登録実施した。リスク提示については慶應義塾大学病院では電子カルテ上で提示されるアプリは提供できたもの、カテーテル 診療を請け負う班員全員に系統的に使用いただけるシステムの構築は困難ということからレジストリへの1)患者からの同意取得確認業務、2)データ入力のみを継続する方針とした。川崎市立川崎病院では電子カルテ上で使用できるアプリの実装が技術的に困難であったことから、紙面上で待機的なカテーテル 治療を実施する症例を担当される医師に対して提示する形式へと変更し、実施した。2019年6月までで川崎市立川崎病院での1)患者からの同意取得確認業務、2)データ入力および3)リスク提示を担っていた臨床研究コーディネーターが退職となり、リスク提示を中断とした。1)患者からの同意取得確認業務を最優先事項として別途臨床研究コーディネーターを雇用し、週に一回3時間のみ訪問いただけることとなり診療実態の把握のために重要となるレジストリデータ登録が可能な状況を維持する方針へ転換した。2020年3月末までで川崎市立川崎病院での新規患者同意取得は休止とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
両病院での説明会でリスク提示は1)カテーテル治療数を制限するものでも無く(カテーテル 適応判断に関するリスク提示では無いため)、また2)診療行為を強制するものではなく、その提示を受けて行動変容するかは医師側の判断に委ねるとした。川崎市立川崎病院では本研究の概念に賛同いただけたことからリスク提示を短期間ながら実施に至ることができた。残念ながら担当者の退職によりリスク提示の継続が困難となってしまった。慶應義塾大学病院では個別化されたリスク予測使用後の結果に対する責任の所在が問題視されアプリを系統的に使用していただける診療体制に至らなかった。これは2018年10月に国立国際医療研究センターのホームページで公開された糖尿病発症予測ツールについて公開後に厚生労働省からリスク予測ツールがプログラム医療機器に該当する可能性があるとの懸念が示されたことも受け、より一層の抵抗感が生まれてしまったことも本研究へ少なからず影響を与えたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の実践とリスク提示の重要性の証明のためには医療提供者の賛同が不可欠である。その一方で本邦の診療報酬体系では手技や検査の数量に応じて増減する仕組みをとっており、診療の質と必ずしも同じ方向を向いていない。本研究では研究概念に賛同いただけた医師によるリスク提示導入前と導入後のカテーテル診療内容比較およびリスク提示導入せず従来通りの診療を行った医師との実績比較も検証する。またリスク提示できた症例数が少ないことから治療行為を分類し、リスクに応じて実践されていたか否かの診療実態ギャップに注目する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新規雇用できた臨床研究コーディネーターが週に1度3時間のみの業務ということから人件費の金額としては低めに済んだこと、また年度末に予定されていた国内、海外学会への参加がCOVID-19の影響により全て中止となったことなどが影響している。
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