研究課題/領域番号 |
18K17333
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
後藤 景子 順天堂大学, 革新的医療技術開発研究センター, 准教授 (10772519)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 周術期 / 心リスク評価 / がん / 外科的マネージメント / 心血管イベント |
研究実績の概要 |
【研究の背景と目的】世界的ながん治療の発展と虚血性心疾患の死亡率の低下の一方、人々は複数の併存症を長く抱えている。そのような患者への効率的な管理戦略のニーズは高まっている。筆者はこれまでに厚生労働省が収集したレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用い、2015年度60歳以上推計人口の98%にあたるユニークID(外来4158万件、入院4091万件)のうち、非感染性疾患(NCDs: non-communicable diseases)を2または3領域有しているIDの平均年間医療費が単独領域のIDに比べ外来と入院のそれぞれ1.3/1.7倍、年間診療日数が+9/+6日増加したことを報告した。がん治療には長期間併存症管理を要し、特に手術治療前には数多くの心臓リスク評価が実施されている。しかしながら、我が国ではがん手術療法における周術期の心血管イベントの発生に関する大規模な研究は未だ行われていない。本研究は大規模データベース(NDB:レセプト情報・特定健診等データベース)を用い、がん手術療法の周術期心血管イベントの全国的傾向を評価し、心臓リスク評価に関する検査を分析することを目的とした。 【方法と対象集団】2012年から2017年度の間に全国保険医療機関でがん手術療法を実施され、データベースで同定された患者を対象とした。 【結果と考察】全期間を通じて22,040,117件のがん手術が確認された。100,000回手術あたりの周術期全冠動脈血行再建術件数は2012年から2017年までの間に変化を認めなかった(P for trend 0.573)。この間に実施された心臓リスク評価検査数は減少したが、心不全と脳卒中の発生割合は減少傾向にある可能性が高かった。周術期の心臓リスク評価の臨床的な効果を評価するにはさらなる分析が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本人高齢者における我が国のMultimorbidityの現状、経年変化について先行研究で報告した。がんに対する外科的マネージメントとして周術期の心血管イベントの発生について全国的な傾向が確認できた。心臓リスク評価の結果と合わせ、慎重に結果検証、分析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
各種統計や研究成果との比較検証を行い、医療経済学的分析ならびに感度分析を行っていく。本研究で示唆された結果について、今後追加的なコホート研究の必要性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
決定された交付金額に応じ厚生労働省から新たなデータの提供を受けた。心血管イベントの経年変化等分析が実施可能な環境をこれまでに整備することができた。追加的なコホート研究と、成果の公表を計画している。
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