研究課題/領域番号 |
18K17337
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
池谷 昌枝 常葉大学, 健康プロデュース学部, 准教授 (00410499)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Health locus of control / 健康寿命の延伸 / 栄養教育プログラム / 高齢者 / 体験型 |
研究実績の概要 |
本研究は、健康寿命延伸のための栄養教育プログラムの開発と実効性の検証であり、3段階で構成されている。本プログラムの特徴は、Health locus of control(主観的健康統制感:以下HLC)による対象者の分類と各型に対応した処遇の設定、講義+調理実習を複合した体験型プログラムであるという点である。研究の第一段階は2018年度の栄養教育プログラムの開発であり、HLCに基づく内的及び外的型の2種類の教育プログラムを作成した。内的型用プログラムはセルフモニターを重視したチェック表を用いて自己評価する方法であり、外的型用プログラムはセルフモニターを行うものの評価頻度が低くソーシャルサポートを重視した受動的な方法とした。第二段階は2019年度において、前年度に作成したプログラムを用いて対象者のHLC分類を行ったうえで内的または外的の一律プログラムを実施し、教育媒体とHLC型との適合を確認した。その結果、HLCの型に適合した栄養教育プログラムは適合しないプログラムよりも行動変容が生起し易いことがわかった。この結果を踏まえ、2020年度では、対象者のHLC型に適合したプログラムを用いて栄養講座を行った。その結果、HLCの型に適合したプログラムにより行動変容が生起し易いだけでなく、プログラム開始時と3カ月後の終了時でHLC得点を比較したところ、対象者全体として内的型を示す得点が高くなった。これは、行動変容を自律的に生起させるための有効な指標であり、HLCの型を考慮した教育プログラムの必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度は研究の第一段階として栄養教育プログラムを作成することであり、完了した。2019年度は作成したプログラムを用いて栄養プログラムを実施することであり、HLC型との適合による行動変容生起について検証することができた。2019年度に実施した対象者は合計で60名であり、当初予定していた70名よりも10名少なかった。対象者が少なかった理由としては、途中離脱及び募集締め切り後の辞退者がみられたことである。2020年度においては、HLC型別のプログラムを実施したが、新型コロナウイルス感染症のリスクを懸念して高齢の対象者を多数募集することができなかったことに加え、調理実習や試食という感染リスクを鑑みて講座の開催を見合わせていたことにより、参加者数が14名と激減したことが問題点である。しかしながら、新型コロナ対策を十分に講じたうえで14名を対象に講座を実施することができ、また、参加者においてはコロナ禍においても健康寿命を延伸したいという気持ちが持続されており、栄養教育プログラムの作成に対する重要性が認識できた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度において、研究対象者数が少ない状況であったことが問題であるが、2021年度現在においても、栄養講座の開催に対して新型コロナウイルス感染症への危険性は低下しているわけではない。したがって、コロナ禍における感染症予防対策を講じながら安全な講座の運営を検討しながら、3密を避けた開催を行う予定である。昨年度の段階では、コロナ禍を原因として対象者が減少した場合は研究期間を延長する予定としていたが、数年の延期によりコロナ禍が沈静することが見込めないため、延期ではなく、現状として行える講座の実施とその分析、さらに栄養教育プログラムの見直しなどを行いながら最終年度に向けて研究を続行する予定とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度においては、新型コロナウイルス感染症による影響で栄養講座の開催が中止となったため、講座で使用する予定としていた施設使用料が還付された。また、参加者数が減少したことによる講座運営のための費用として、食材費や消耗品、教材作成のための費用などが減少した。さらに栄養講座補助のために予定していた学生アルバイトに対する謝金においても、大学の規定により研究計画時に設定していた金額よりも少額となったことがある。これらの理由により、次年度使用の助成金額が生じた。今後は、新型コロナウイルス感染症予防を鑑みた講座運営となるため、感染症予防に必要な衛生関連の物品や調理に関わる機器の共有を避けるための物品、その他感染症対策として必要と思われる新たに生じた物など、当初予定とは異なる物品購入などにも助成金を用いることとなる。
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