本研究の目的は、韓国における個人・家計の医療費支出や医療アクセス頻度の不平等度を所得水準や年齢階級別に測定し、その格差を構成する要因分解を行って韓国の医療格差の実態やメカニズム、経年変化を定量的に解明することである。医療保険に関する日韓での異なる制度設計が、経済力の差によって同じ医療ニードでもアクセスできる医療サービスに格差をもたらしているのではないかという問いに答えるべく、本研究では「韓国医療パネル調査」の個票データを用い、経済学的な分析手法を応用して韓国における医療格差を実証的に明らかにする。分析手法には、格差の構成要素となる要因分解から寄与度を算出できる平均対数偏差(Mean Log Deviation: MLD)と呼ばれる手法を応用して、韓国の医療格差を実証的に明らかにする。
研究期間の前半では、データ分析に必要なコンピュータやStata等のソフトウェアの購入、韓国保健社会研究院(KIHASA)が提供する「韓国医療パネル調査」の個票データの入手および分析用データセットの構築、医療経済学や韓国の医療制度・政策に関する関連文献・資料等を通じた先行研究や分析手法の整理などを行った。中盤からは、適宜「韓国医療パネル調査」の個票データを更新しながら、回帰分析による手法を用いて韓国の医療格差を測定し、その分析結果をまとめて、国内外の学術大会やセミナー等で研究報告を行った。終盤には、学術論文を執筆して、国際学術雑誌への投稿を行った。最終年度には、投稿論文の改稿を行いながら、アジア経済研究所内のワーキングペーパーにて公開した。
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