高齢者は多病であることが多く、疾患ごとに薬剤を処方することで多剤併用の状態に陥りやすい。また、医療ニーズが様々である上、生活の場や介護の必要度等が異なり、個々の状況に応じた薬物治療を提供する必要がある。一方で、高齢者の薬物治療においては、十分に科学的な意思決定を行うためのエビデンスが不足しているのが現状である。
(1)市販後臨床研究に高齢者が組み入れられ、高齢者に適したエビデンスが創出されているのか、臨床研究登録情報を用いて検討した。具体的には、まず臨床研究情報ポータルサイトを用いて、2014年~2018年に登録されたSGLT2阻害薬に関する介入研究133件を特定した。その後、目標症例数が30例以上等の要件を満たす82件を評価対象とし、研究対象者の選択/除外基準を調査した。結果として、約3/4の研究で年齢上限値が設定されており、そのうち約6割が年齢上限値を75歳としていた。また、半数以上の研究で心不全の合併や心血管イベントの既往等が除外基準となっており、間接的に高齢者が含まれにくい状況であることも分かった。研究成果は国内学会にて報告した。
(2)介護施設入所者のフレイル評価尺度として国際的に使用されているFRAIL-NHの日本語版を作成した。作成にあたっては、原版の翻訳、逆翻訳、原版開発者への確認、試験的使用という一連のプロセスを経て、その言語的妥当性を検証した。今後、介護施設入所者のフレイル評価が進められ、薬物療法を含む治療の意思決定に活用されることが期待できる。研究成果は国内誌にて報告した。
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