研究課題
1)終末期高齢者の診療実態に関する文献調査: The Economist Intelligence Unit のQuality of Death Index、海外の先行研究における終末期医療の質の構造、プロセス、アウトカム指標に関して文献調査を行い、NDB特別抽出データに含まれる項目から各指標を定義、算出する研究の実施可能性を検討した。終末期医療の質のドメインとして、1)終末期患者の症状管理、2)患者・家族の精神的、実務的サポート、3)患者・家族中心の意思決定、4)スピリチュアルサポート、5)ケアの持続可能性、6)医療従事者に対する精神的、組織的サポート、が提案されており、各ドメインの構造、プロセス、アウトカム評価が行われていた。この内NDBレセプトから把握可能な指標は、1)終末期患者の症状管理の構造、プロセス指標(緩和ケア、鎮痛剤による疼痛管理状況等)、3)患者・家族中心の意思決定のアウトカム指標(死亡一定時間前の人工呼吸の中断、心肺蘇生の不実施等)と想定された。2)NDBサンプリングデータを用いた診療実態の解明: NDBサンプリングデータセットを用い、終末期高齢者の診療実態の経年変化を検討した。平成24年から26年にかけて、死亡前7日間の心肺蘇生術(CPR)、人工呼吸(MV)、中心静脈栄養カテーテル挿入(CVC)、ICU入院の割合は、それぞれCPR: 11.0%から8.3%、 MV:13.1%から 9.8%、 CVC:10.6%から7.8%、ICU:9.1% から 7.8%に減少していた。解析結果を、International Journal of Environmental Research and Public Health に発表した。( Int. J. Environ. Res. Public Health 2021, 18, 3135)3)特別抽出データを用いた解析 :年齢75歳以上の入院例において、死亡前12ヶ月間の期間に心肺蘇生術の実施状況を検討し、記述統計を得た。今後、ICU入院、人工呼吸、中心静脈栄養、経鼻栄養、胃瘻、輸血、透析、昇圧薬、抗生物質投与、点滴等の実施状況、ならびに実施の暴露要因を検討する計画である。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、NDBサンプリングデータを用い、65歳以上高齢者における死亡前の生命維持地治療の実施実態に関する、予備的解析およびその論文発表、文献調査を完了した。特別抽出データでは、75歳以上の入院死亡例において、死亡前12ヶ月間の期間に心肺蘇生術の実施状況を検討し、記述統計を得ることが出来た。現在、引き続きデータ解析を進めており、今年度内には、予定していた、ICU入院、人工呼吸、中心静脈栄養、経鼻栄養、胃瘻、輸血、透析、昇圧薬、抗生物質投与、点滴等の実施状況、ならびに実施の暴露要因の解明が完了する見込みである。
今年度は、特別抽出データを用いた解析を完了する予定である。現在までに、特別抽出データを用い、解析用データベースの構築を完了し、年齢75歳以上の入院例において、死亡前12ヶ月間の期間に心肺蘇生術の実施状況を検討し、記述統計が得られた。今後、ICU入院、人工呼吸、中心静脈栄養、経鼻栄養、胃瘻、輸血、透析、昇圧薬、抗生物質投与、点滴等の実施状況に関し、分析対象患者のレセプトデータを過去12ヶ月分連結したデータセットを作成して解析を行う。また、サンプリングデータでは十分に検討出来なかった、死亡前の生命維持治療の実施に関連する暴露要因として、医療供給側要因を検討する計画である。医療供給側要因としては、医療機関所在地データを元に、各都道府県における終末期の医療、介護資源の整備状況、がんの緩和ケア等診療報酬の加算から推定できる人員配置状況等のデータを用い、分類を行う予定である。
論文の英文校正、投稿の使用が来年度になったため。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Int. J. Environ. Res. Public Health
巻: 18 ページ: 3135
10.3390/ijerph18063135