研究課題/領域番号 |
18K17346
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
酒井 未知 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 助教 (10604697)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 終末期医療 / レセプト |
研究実績の概要 |
1)文献調査: 終末期高齢者医療の重要課題についてビッグデータを用いて分析した論文を調査、NDB特別抽出データ解析計画を完了した。以下、NDBの解析課題と考えられた。 「マルチモビディティの終末期医療の目標設定」 終末期医療の先行研究は、がんや心疾患、認知症等、疾患特異的な終末期医療に焦点を当てた研究が多い。一方、日本の75歳以上高齢者の約80%は、多疾患併存状態(マルチモビディティ)にある。マルチモビディティにおいて単一の疾患に焦点を当てた医療の目標設定は困難で、マルチモビディティの終末期医療は重要課題となっている。NDBレセプトデータを活用することで、疾患を単位とした終末期医療に留まらず、多疾患を抱える「人」単位で、終末期の診療実態を解明出来る。マルチモビディティの終末期医療実態の解析により、がん、末期心不全のみに適応が限定される緩和ケアのあり方を含め、高齢者の病態の多様性に対応できる医療提供体制を検討可能と考えられた。 「終末期医療の地域差研究」 サンプリングデータ解析の結果から、本邦の終末末期医療の質は経年的に向上していることが示唆された。しかし地域差に代表される医療供給側因子に起因するばらつきがあることが欧米の研究から示された。さらに、終末期医療の地域差は、patient preference(の地域差)で説明されないことが示された。本邦において、地域差に起因する終末期医療のばらつきを解明し、質均てん化に向けた研究が必要と考えられた。 2)特別抽出データを用いた解析 :年齢75歳以上の入院例、1年分の医科レセプトのデータ解析を効率的に行うため、大幅なデータ構造変更を行った。本研究対象症例において、死亡前12ヶ月間の期間の心肺蘇生術、人工呼吸、ICE入院の実施状況とその地域格差を検討し、記述統計を得た。今後、結果の検証、多変量解析、論文執筆を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
特別抽出データを用いた解析において、年齢65歳以上の入院例、1年分の医科レセプトのデータ解析を効率的に行うため、大幅なデータ構造変更を行った。本作業のためのプログラム作成、大規模データの構造変更に想定外の時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、日本における終末期高齢者が受ける医療のインテンシティ(医療費、ICU入院、死亡前の生命維持治療の実施割合)の地域差を解析する。 解析対象は、2013年4月から2014年3月までに入院死亡した75歳以上高齢者の医科入院、DPCレセプトデータとし、死亡前の入院期間30日以上、死亡前の入院期間7日以内の期間を解析する。 説明変数は、1)医療機関所在地(死亡日のレセプトの入院医療機関の都道府県を以下で分類: a)訪問看護の年間受給者数 →医療資源へのアクセス、b)看取り実施病院数、診療所数 →医療資源へのアクセス、c)独居割合 →家族構成、2)性、3)年齢、4)疾患(悪性新生物や心不全等、レセプトから確度の高い情報を得られる疾患分類を選択する)。アウトカムは、1)死亡前7日、30日の総医療費、2)ICU入院割合、3)死亡前の生命維持治療の実施割合(心肺蘇生術、人工呼吸、透析、強心薬、昇圧剤, 胃ろうや中心静脈栄養等の栄養療法の導入)とした解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文の執筆、投稿のための費用を次年度に使用する。
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