感染症医による直接的な介入を含めた5つの多面的介入後に、感染症医によるレクチャー、フィードバック、月毎のレポートを中止し、手引きとオーダーセットの情報提供のみとして抗菌薬の処方状況に変化があるかを追跡した。2018年10月から2019年9月まで5つの多面的介入を行い、2019年10月からは抗菌薬の手引きと電子カルテのオーダーセットの案内のみとし、2021年3月まで処方状況の追跡を行った。2020年3月より新型コロナウイルス感染症のパンデミックとなったが、1000受診患者数あたりの処方件数の優位な増加は認めなかった。また、適切率についても介入前後で優位な変化は認めず、適切率は80%前後で推移をしたが、時系列解析では、介入を減らした直後に適切率は優位に低下し、トレンドも悪化傾向であった。2019年10月以降に初めて抗菌薬を処方した医師は感染症医による講義やフィードバックを受けたことがない医師であるが、その医師達の適切率は、2019年10月以前からいる医師と比較して優位に低値であった。しかしながら、介入等を何もしていない2016年の適切率と比較すると優位に高値であった。感染症医によるフィードバック等の介入を中止しても手引きや電子カルテオーダーセットの存在による救急外来の内服抗菌薬の処方適切率はある程度維持される可能性が示唆された。しかしながら、感染症医によるレクチャー・フィードバック・月毎のレポートを受けた医師と比較すると適切率は優位に低値であり、人対人の直接的な介入も有効であることが示唆された。新型コロナウイルス感染症パンデミックにおいては抗菌薬処方量が増加することが指摘されているが抗菌薬適正使用プログラムが施行されている病院においては必ずしもそうではない可能性がある。今後も抗菌薬適正使用を促進するための手法の探索が必要である。
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