研究課題
2019年の日本乳癌学会学術集会の会期中に検診関連委員会から診断カテゴリーが設定される報告があり、『乳がん検診精検報告書作成マニュアル』の初版が学会初日に発刊された。検診での『検診カテゴリー』と精査機関での『診断カテゴリー』を区別するものであるが、これにより本研究対象であるC-3の石灰化は検診では精査となるが、精密医療機関では経過観察が推奨されることになる。本研究計画で検証する予定であったC-3石灰化のマネジメントの指針が示されたことになったため、対策型検診(住民検診)レベルの「経過観察:Active screening」を断念した。一方、もう一つの柱であるCADによる石灰化の「存在診断」からの発展として個々の石灰化をデジタル画像のpixel単位で解析した「質的診断」の開発については引き続き検証中である。また、検診精度の底上げと新規マネジメント研究の一環として高齢者の検診についても検証を行った。日本では多くの諸外国では設定されている受診年齢の上限が設定されていない。高齢化社会が加速する中で非常に重要な課題である。75 歳以上で受診した17,232例の検診結果と同時期の宮城県癌登録による年齢階級別罹患率とを比較したところ、75歳以上の高齢者では高濃度乳房の比率が低下するため、マンモグラフィ検診の精度は高く、他の年代 と比較してPPVにおいてはむしろ良好な結果であった。一方、癌登録による実数データとの照合では、高齢者では 検診受診者の罹患率が高く、特に80歳以上では癌登録の2倍以上の罹患率であり、いわゆる過剰診断や、自覚症状を持ってから検診を受けるなどのバイアスが働いている可能性が示唆された。乳癌検診の目的は乳癌死亡率の減少であるが、高齢の検診受診者は受診の時点で期待できる平均余命が限定されており、若い世代の検診受診者とは違う尺度での評価基準が必要であることが示唆された。
3: やや遅れている
研究計画の一部方向転換
・石灰化の質的診断を可能にするCADの開発として、AI-based CADによるカテゴリ3石灰化の良悪性鑑別能力の調査・検診精度の底上げと新規マネジメント研究として、高齢者の検診受診年齢上限設定のための検証:実臨床データ、検診データ、がん登録データの照合
自施設の画像使用のため、マンモグラフィ画像デジタル経費は使用しなかった。画像解析ソフト未購入
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)
日外会誌
巻: 120(1) ページ: 114 - 116
巻: 120(5) ページ: 564 - 566