研究課題/領域番号 |
18K17351
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
財津 將嘉 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (10372377)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 最長職業 / リスク / 社会格差 / がん / 循環器 |
研究実績の概要 |
申請者は、社会格差の研究の最先端研究機関であるハーバード公衆衛生大学院の世界的権威Ichiro Kawachi教授と共同で、日本標準職業及び産業分類を用いて、現職および過去3つの職業から最長の職業を同定し、日本標準職業分類及び日本標準産業分類にて分類される約10,000種類以上の職業に照らし合わせ、網羅的に分類・抽出するアルゴリズムを完成させた。また、この精緻に分類された最長職業を、以下の意義のある職業グループに区分する手法を完成させた(1)ブルーカラー職(保安、農林水産、生産工程、機械運転、建設、運搬、清掃、包装等)、(2)サービス職(事務、販売、サービス等)、(3)専門職、(4)管理職。さらに、この職業グループを、日本標準産業分類によって(1)ブルーカラー産業(農林水産、鉱採石、建設、製造、電気、ガス、熱、水道、運輸、郵便等)、(2)サービス産業(卸小売、宿泊、飲食、サービス、娯楽等)、(3)ホワイトカラー産業(情報通信、金融、保険、不動産、学術研究、専門技術サービス、医療福祉、公務等)にグループ化することに成功した。 この完成させた、新たな指標である「最長職業」を用いて、日本における各種がんおよび循環器疾患の罹患リスクに職業格差があることを発見した。また、各産業職業従事者における生活習慣の評価(飲酒および喫煙)を評価して、職業産業ごとの喫煙や飲酒の生活習慣の差によって、観察された各種がんおよび循環器疾患の罹患リスクの職業格差を全て説明できるかを検証したが、飲酒や喫煙によって、がんおよび循環器疾患の職業格差を部分的に説明できたものの、大部分の職業格差が飲酒や喫煙では説明できないことも発見した。これらの研究実績については国内の学会や医学雑誌紙面上にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概ね当初の計画通り進行しているが、組織の免疫染色等の実験についてはやや遅れている。日本標準職業及び産業分類を用いて、現職および過去3つの職業から最長の職業を同定し、日本標準職業分類及び日本標準産業分類にて分類される約10,000種類以上の職業に照らし合わせ、網羅的に分類・抽出するアルゴリズムを完成させた。この完成させた、新たな指標である「最長職業」を用いて、日本における各種がん(胃がん、肺がん、肝がん、膵がん、前立腺がん、乳がん)および循環器疾患(冠動脈疾患、脳血管疾患)の罹患リスクに職業格差があることを報告した。また、各産業職業従事者における生活習慣の評価(飲酒および喫煙)を評価して、職業産業ごとの喫煙や飲酒の生活習慣の差によって、観察された罹患リスクの職業格差を説明できるかを検証したが、飲酒や喫煙によっては部分的に説明できたものの、大部分の職業格差が飲酒や喫煙では説明できないことも報告した。
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今後の研究の推進方策 |
日本における各種がんおよび循環器疾患の罹患リスクに職業格差は、飲酒や喫煙によって部分的に説明できたものの、大部分が飲酒や喫煙では説明できかった。そこで、今後は生活習慣病(高血圧、糖尿病、肥満など)により、これらの観察された職業格差が説明できるかを検証する。また、喫煙を除いては、生活習慣リスクファクターとして大きな影響を与えていると考えられる飲酒については、より精緻な評価指標の作成(生涯アルコール摂取総量)を試みて検証する。さらに、ストレスマーカーと考えられるバイオマーカーの検証(白血球分画)および病理組織の免疫染色(HMGB1)によって、各最長職業グループにおける生活習慣因子、免疫応答とがんおよび循環器疾患の発症の関連を検証し、観察されたがんおよび循環器疾患の社会格差を生活習慣因子および免疫機能によって説明できるかを検証していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度はベースラインのデータ解析や統計学的手法の開発を行い、ベースラインデータの報告および出版をしたが、当初実施予定であったワークステーションの購入や免疫染色については、平成31年度以降のに実施することとしたので、次年度使用額が生じた。研究遂行する上では大きな問題はなく、研究目的を達成できる。
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