研究課題/領域番号 |
18K17351
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
財津 將嘉 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (10372377)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 社会格差 / がん / 職業 / がん登録 / 免疫応答 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、ハーバード公衆衛生大学院と共同で開発した、日本標準職業分類及び日本標準産業分類による網羅的なアルゴリズムにより導かれる健康社会決定要因のひとつの指標である「最長職業」を用いて、神奈川県地域がん登録における尿路上皮がんの予後格差、および腎細胞がんの病理組織分布の職業間の違いを明らかにした。尿路上皮がんの予後については、5年全生存率は85.8%であった。管理・専門職従事者のグループと比較すると、事務・サービス・販売職従事者のグループ、農林漁業従事者のグループ、主婦、学生、無職などグループでは予後の差は認めなかったものの、生産工程・輸送・建設・採掘従事者のブルーカラー職種のグループで予後が不良であり(全死亡のincidence rate ratio 2.07、95%信頼区間1.32 to 3.25)、尿路上皮がんにおいて職業間の予後の差があることが示唆された。また、治療やステージを調整すると、予後の差が認められなくなったことから、予後因子によるpathwayの差が考えられた。腎細胞がんの病理組織分布については、ブルーカラー職種のグループではhigh grade腎細胞がんの割合は22%であったが、その他の職種では11%であり(カイ2乗検定、P=0.02)、ブルーカラー職種において腎細胞がんの悪性度が高い可能性が示唆された。さらに、免疫応答の経路に関して、腎細胞がんの病理組織分布において、各職業別に細胞質のhigh mobility group box 1(HMGB1)の染色パターンの分布を引き続き分析した。この様に、職業間には職業曝露の差が存在しうるために、産業保健に関する情報収集も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の中で、やや当初の計画より遅れている。これまで、日本標準職業及び産業分類を用いて、現職および過去3つの職業から最長の職業を同定し、日本標準職業分類及び日本標準産業分類にて分類される約10,000種類以上の職業に照らし合わせ、網羅的に分類・抽出するアルゴリズムを完成させた。この完成させた、新たな指標である「最長職業」を用いて、日本における各種がんおよび循環器疾患の罹患リスクに職業格差があることを報告し、がんの予後にも職業格差が存在することを報告してきた。また、少量飲酒によるがんリスクおよび用量反応関係を検証し、がん全体についてみると、飲酒をしなかった人が最もがん罹患のリスクが低く、また、飲酒した人のがん全体の罹患リスクは低~中等度の飲酒で容量依存的に上昇することを報告してきた。本年度は、尿路上皮がんの予後格差、および腎細胞がんの病理組織分布の職業間の違いも明らかにした。この様に、職業間には職業曝露の差が存在しうるために、産業保健に関する情報収集を集中的に行なった。また、そこで得られた知見をもとに、現在、腎細胞がん患者について収集した病理組織のHMGB1やTreg細胞の免疫染色の結果を踏まえて、職業間で検証中である。
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今後の研究の推進方策 |
日本におけるがんおよび周辺疾患のリスクの社会格差は、飲酒や喫煙だけでは説明できなかった。また、病理組織にも慢性炎症を経由した職業間の差が生じる可能性が明らかとなってきた。来年度は、本研究結果を集約し取り纏め、学会発表および論文発表を行う。さらには職業や生活習慣の曝露として、加熱式タバコ等にもターゲットを広げる。また、既存の大規模データやコホートデータ等も利活用し、社会格差の広がりを防ぐ取り組みにつなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により当初予定していた国内出張が困難となったために次年度使用額が生じた。来年度は予定しているデータ収集を完了させ、研究の取り纏めを行い学会発表および論文発表を行う。
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