研究実績の概要 |
インフルエンザは時に致死的であり、ハイリスク群(乳幼児、高齢者、妊婦、基礎疾患を有する者)にとって重要な課題である。しかし、重症化の原因は明確でなく、重症化予測は困難である。これまでに我々は、2009年以降の臨床分離株の増殖能に焦点を当て解析を進めたところ(n=156)、A/H1N1、A/H3N2、Bのいずれにおいても高増殖能株が検出された。そこで、本研究では、高増殖能株とインフルエンザ重症化との関連を検証した。その結果、増殖能と肺胞上皮細胞の細胞傷害の程度に相関がみられた(A/H1N1: n=9, r=0.67, P<0.05; A/H3N2: n=10, r=0.86, P<0.05; B: n=10, r=0.63, P=0.05; Total: n=29, r=0.65, P<0.05)。また、増殖能と重症化の指標と報告されている臨床検体鼻汁中のウイルス量にも相関がみられた(A/H1N1: n=27, r=0.40, P<0.05; A/H3N2: n=24, r=0.45, P<0.05; B: n=25, r=0.51, P<0.05; Total: n=76, r=0.53, P<0.05)。このことは、増殖能が有望な重症化予測因子であることを示唆している。増殖能を重症化予測の診断学に発展させるために、増殖能を決定するウイルス遺伝子についても検証した。その結果、これまでに報告されている増殖能に関連した8分節24個の主要なアミノ酸について、増殖能との関連性は確認されなかった。現在、純系ウイルスを作出し、高増殖能を規定する責任遺伝子の同定に挑戦するための準備を進めている。増殖能に関連する因子を同定し、重症化予測因子を診断学に応用する基盤を作りたい。
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