研究実績の概要 |
【研究目的】ラクトフェリンは主に乳汁中に分泌される糖タンパク質である。これまでに抗炎症作用、抗アレルギー作用、抗菌作用などの多くの有効作用が報告されており、健康サプリメントとして用いられているが、一方で、過剰に摂取した場合等における有害可能性についての情報はほとんどない。本研究では、ラクトフェリンの安全性を明らかにするため、ラクトフェリンのアレルギー性の可能性についてマウスにウシラクトフェリンを投与し、その影響について腸管を中心に検討をおこなった。 【方法と結果】 BALB/c雌マウスを用い、水酸化アルミニウムアジュバントとラクトフェリン(BLF)の腹腔内投与後、BLFの経口投与を行った (Alum+BLF)。また、Alumなし、ラクトフェリンの代わりに生理食塩水を用いた群を用意し (Saline, BLF及びAlum+Saline)、ELISA、リアルタイムPCR、フローサイトメトリー法、腸内細菌叢解析を行った。Alum+BLF群において、ラクトフェリン特異的IgG量の増加、脾臓及び腸間膜リンパ節における細胞数、CD4、CD8、B220陽性細胞の増加、小腸皮細胞total RNA中Tslp及びTnf遺伝子の発現低下が認められた。さらに糞便から抽出したゲノムDNAを用いた16S rRNAによる腸内細菌叢解析では、バクテロイデス門の割合がAlumの添加により有意に低下していた。以上の結果より、ラクトフェリンの摂取により特異的抗体が産生される条件では、腸内細菌叢が変化し、腸上皮組織や腸関連リンパ組織等に影響を及ぼす可能性が示された。
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