研究課題/領域番号 |
18K17356
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
勇井 克也 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (50783875)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 血管内皮細胞 / 収縮 / アルコール / 一過性反応 |
研究実績の概要 |
トロンボキサンA2(TXA2)は強力な収縮作用を持つ血管作動性物質であるが、一方で内皮依存性弛緩に影響を及ぼすなど、他の収縮および弛緩因子との複雑なクロストークにより血管張力の均衡を保ち恒常性を維持に重要な役割を果たしている。さらに、感染症等の全身性炎症におけるサイトカインの分泌や一酸化窒素の過剰産生を伴い、血管拡張により四肢末梢が温暖になることに注目し、敗血症性ショックの初期病態であるwarm shockとTXA2の関連性について検討を行った。本研究は、正常Wistar系雄性ラットから上腸間膜動脈を摘出し一定の張力を負荷し安定させた後、Phenylephrine (Ph) による収縮が最大に達したところにIL-1βを添加し、1時間毎の張力の変化を調べた。また、Ph収縮の30分前にTXA2受容体阻害剤SQ29548などの各種阻害剤で前処置した各血管についても同様の検討を行った。IL-1β非暴露下では、Ph収縮は最大収縮を持続したのに対し、暴露下では、1時間後に一過性の収縮を示した後に、3時間後に急激な弛緩反応を示した。そして、内皮細胞剥離血管においては、暴露による一過性の収縮と弛緩反応は見られなかった。また、暴露による一過性の収縮と弛緩反応がSQ29548により抑制された。 さらに、収縮反応について上記までの同様の方法にて、慢性アルコール摂取ラットとの比較検討を行った。予備的検討の結果、慢性アルコール摂取ラットにおいてさらなる収縮の増加傾向を示した。今後、遺伝子発現の変化について行う予定である。本研究から、炎症血管中のPh収縮下において、内皮細胞を介したTXA2が一過性の血管収縮を誘導することにより、後の急激な弛緩反応を抑制することが明らかとなり、TXA2が敗血症性ショックの初期における生体防御機構の一翼を担う可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度の実験計画通り実施した。収縮の増大は、TXA2を介した一過性の収縮反応であることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度の成果とともに引き続き研究を進め、さらに、慢性ラットを用いた血管収縮実験を進める予定である。また、目的タンパク質の一つであるUp4A指示薬が入手困難なため、関連蛋白質を用いて、メカニズムの解明に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度で使用していた消耗品の残りを用いたため、令和元年度は、新たな消耗品の購入金額の総額を少し抑えて課題に取り組むことが出来たため。次年度での予算の使用を予定通り行う。
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