研究課題/領域番号 |
18K17357
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
山内 武紀 昭和大学, 医学部, 講師 (40576287)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ジメチルモノチオアルシン酸 |
研究実績の概要 |
わが国にはヒ素を多く含む海藻や海産物を摂取する独自の文化があることなどから、これまでヒ素を取り扱う作業者における感度・特異度の高い影響マーカーの開発は困難であった。代表者らはこれまで、培養細胞の種類によってヒ素の代謝能が異なり、それらが毒性の組織特性に関連する可能性を示唆してきた。このことを利用し、組織特異性の高い影響マーカーを確立することが本研究の目的である。 ジメチルモノチオアルシン酸 (DMMTA) は3価の無機ヒ素よりも毒性が強い可能性が示唆されている有機ヒ素化合物であるが、代表者らはマクロファージ由来株化細胞がDMMTAを産生することを見出した。また、細胞の由来によりDMMTAの産生量に違いがあることも示唆された。よって、DMMTAの産生量が組織特異性に関連していると考えられることから、今年度は超高速液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析計 (UPLC-MS/MS) によるDMMTAの微量分析法を確立することとした。 DMMTAは低分子でありチオール基を持つものの、エレクトロスプレーイオン化法では陽イオンとして検出される。陰イオン交換カラムおよび陽イオン交換カラムを用いた分析法を検討したが、保持が十分ではなく他のヒ素化合物との分離が困難であった。陽イオン交換基と陰イオン交換基を両方持つカラムを使用したところ、良好な結果を得ることができ、標準品を用いた検討では定量限界が概ね0.1 ppbのオーダーであり、高感度な分析手法を見つけることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、分析法の確立だけでなく、代謝経路の検討、その他の含硫ヒ素代謝物の確認等も実施する予定であったが、DMMTAをサンプルから抽出する方法の検討に想定外の時間を要している。先行研究では、他のヒ素化合物を抽出するためにはイオン交換基を組み合わせた固層抽出法が使用されていたが、同じ手法を用いてもDMMTAの保持は極めて悪く、抽出が困難であった。また、特に含硫ヒ素化合物の標準品が入手困難であることも、代謝物の確認等が遅れている要因でもある。
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今後の研究の推進方策 |
上記の抽出法については、UPLC-MS/MSのカラムのように陰イオン交換基と陽イオン交換基の両方を同時に利用する固層抽出法を検討している。ヒ素化合物の標準品については購入が困難なものもあることから、受託の合成なども視野に入れている。平成31年度は当初計画通り、由来する組織が異なる培養細胞株に3種類のヒ素を曝露して、代謝活性化能の違いについて検討する。ただし、平成30年度に検討が終わらなかった課題についても、平成31年度内に検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の理由により、今年度の進捗は当初計画から少し遅れている。特に代謝経路の検討やヒ素代謝物の確認が困難であった。このため、予算(案)よりも少ない支出額となってしまったが、平成31年度にこの部分についても検討する予定である。
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